宮坂社長が語る“ヤフーの役割”--「スマホファースト」2年半が経って

井指啓吾 (編集部)2014年09月20日 13時00分

 9月16~18日にわたり開催されたデジタルマーケティングカンファレンス「アドテック東京」で、ヤフー代表取締役社長CEOの宮坂学氏が「“脱皮”のその先へ」と題した基調講演を行った。

  • ヤフー代表取締役社長CEOの宮坂学氏

 宮坂氏は2012年にも同イベントに登壇し、「脱皮しない蛇は死ぬ」をキーワードとして、当時ヤフーが打ち出した戦略「スマートフォンファースト、PCセカンド」について説明していた。

 当時のヤフーはスマートデバイス向けのサービスがほとんどなく、アプリのダウンロード数は、すべてのサービスを足しても約3000万ダウンロードほどだったという。この戦略が始まっておよそ2年半が経つが、どのような変化が起きているのか。

 宮坂氏によれば、PCでしか検索をしない人が半減し、その一方でスマートフォンでしか検索をしない人が7倍に増加。また、スマートデバイス向けアプリのダウンロード数は約2億件まで伸びたという。「日本のインターネット人口が1億人ということを考えると、数だけを見れば、それなりに育てることができた」(宮坂氏)。

 2014年4~6月期には、Yahoo! JAPANへのスマートフォンからの流入と、PCなどスマートフォン以外からの流入が逆転した。宮坂氏は「いつかくるだろうとは思っていた。これはヤフーにとって大きな転換点ではないか」と話し、「Yahoo! JAPANの歴史の中でも、非常に大きな四半期だった」と振り返る。

 「インターネット企業の中には、このクロスオーバーをとっくの昔にやっているところも多い。ただ、Yahoo! JAPANはユーザー数が多いがゆえ、日本で最も“インターネットリテラシーがそれほど高くない人”が使っているサイトだと思っている。そういったサイトでさえ、ついにPCよりもスマートフォンがアクセスの比率で上回ってきた」(宮坂氏)。

  • インターネットの利用はラガード(遅延者)層まで浸透

  • ヤフーの社内データによれば、デバイス別の利用ではスマートフォンのDUB(Daily Unique Browser)が増加している

  • ヤフーの社内データ、2012年7月と2014年7月の比較

 インターネットの利用度は着実に増加しているが、スマートフォンの普及によってサイト流入におけるデバイスの比率が変わり、これまでインターネット企業の成長を支えてきた“PCからのアクセス”は減っている。宮坂氏はこれを前向きに捉え、次の動向を予見する。

 「PCですら衰退するように、スマートフォンもいつか必ず普及しきって、伸びが止まると思う。その次には、いま話題になっている『IoT』と呼ばれる全く新しいデバイスが台頭し、インターネットとつながる量や頻度はもっと増えるはずだ」(宮坂氏)。

 今後、さまざまなデバイスがインターネットにつながるようになれば、より便利なサービスが生まれるだろう。そのタイミングで重要になるのは「(サービスやデバイス操作やの)簡単さ」と宮坂氏は言う。

 「テクノロジというのは、最初は極一部の人がどんどん使い、改善していく。テクノロジが社会を変えるには、歩みの一番遅い人(ITリテラシーの低い人)がその技術を使えるようにしなければならない。ヤフーでは、これからの新しいデバイスに対してサービスを作っていく必要がある。インターネットの技術をどんどん開発して、誰もが使えるサービスを作るのが、我々にとって非常に重要なことだ」(宮坂氏)。

 宮坂氏は講演時間の多くを使い、東北復興支援活動の一環として実施している「ツール・ド・東北」、および現地で暮らす人々と触れあう中で感じた「インターネット利用が“普通のこと”になったこと」を熱く語った。今後、地方を中心とした中小企業などによるインターネットのビジネス活用の支援にも、課題意識を持って取り組んでいくという。


宮坂氏自身もツール・ド・東北に出場している

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