仕掛け人は「2人」いた--“グソクブーム”誕生の舞台裏 - (page 2)

井指啓吾 (編集部)2014年09月13日 10時00分
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 長尾氏がダイオウグソクムシを知ったのは、ニュースサイト「伊勢志摩経済新聞」の記事を偶然目にしたことから。「幼い頃は動物園の飼育員に憧れていたくらい動物が好きで、ネットでその手のネタをよくチェックしていた。ダイオウグソクムシを初めて知り、興味を持った」(長尾氏)。

謎の深海生物「ダイオウグソクムシ」絶食1523日、啓蟄でも食べず(伊勢志摩経済新聞)

 “1523日間の絶食記録を更新したのは、2007年9月9日入館の「No.1」。前回食べたのははるか昔、4年2カ月前の2009年1月2日だ。”

 当時、ニコニコ生放送番組の企画を考えていた長尾氏は、「絶食と言われているが、実は閉館後の水族館で餌を食べているんじゃないか?」といった思いを募らせていたこともあり、このダイオウグソクムシを生中継することを思いついた。鳥羽水族館との交渉には自ら臨み、「ニコニコ動画とは……」から始まる約3時間の説明の末、協力を得ることに成功した。

 2013年3月29日、ダイオウグソクムシはニコ生にデビューした。“48時間”という切り口がどこから生まれたかというと、同年3月29日20時~3月31日20時に配信された「春のニコニコ48時間ぶっとおし生放送!!」の“通し企画”に偶然選ばれたこと。

 「『水槽を映しているだけだから48時間ずっと流しちゃえば?』と、幸運にもダイオウグソクムシが通し企画に選ばれた」(長尾氏)。

  • この日、ダイオウグソクムシのかぶりものを準備してくれていた

 長尾氏はその後、「アイデアを出した者が一気通貫して業務を巻き取る」という長尾式ワーキングスタイルに則り、鳥羽水族館とアポを取り、情報を集め、番組ページを作り、機材を用意し、宿泊するホテルを予約し、現地に機材を設置して、生放送開始を迎えた。

 放送は順調に進んだ。大変だったのは「夜中は基本的に寝られないこと。いや、寝てもいいんですけどね、配信はそう止まるものでもないので。寝ていいんですけど、寝にくいっていう」(長尾氏)。

 30日21時頃には、ダイオウグソクムシのNo.1(絶食中だった個体)がひっくり返ったまま約1時間もとに戻れなくなるなどのハプニングもあった。

 「『誰かいないのかよ』というコメントが流れて心を痛めた。すぐ近くにいるのに、僕はもう水族館に入れなかったから」(長尾氏)。

  • 急に立ち上がったNo.1

  • 踊りながら横転

  • 長尾氏ではなく、鳥羽水族館の広報さんがもとに戻していた

 結果的に放送は大成功だった。48時間特番全体を見渡してみれば、他にもさまざまなメイン番組が目白押しであった中、なぜか超低コストな番組が48時間をかけてジワジワと人気を得ていった。

 「当初はとりあえず、時間にこだわらずグソクの放送ができればいいなと思っていた。長時間放送が成功したのは偶然の産物。僕が戦略的に企画をしたわけではなくて、通し企画に選ばれて、なぜかうまくいっただけ」(長尾氏)。

 長尾氏はその後もダイオウグソクムシの生中継を何度か繰り返し、実績を積み重ねていった。水族館からは、放送をきっかけにして、普段は水族館に足を運ばないような人が訪れるケースが増え、グッズも多く売れるようになったという言葉と、まさかここまで注目されるとは思ってなかったという言葉をもらったという。

 ダイオウグソクムシの生中継番組がニュースで取り上げられるようになると、他の水族館や動物園との企画が進めやすくなった。2013年11月11日のチンアナゴを皮切りに、コツメカワウソ、ハダカデバネズミと新たな動物が主役デビューしている。


首または胴を長くしてエサを待つチンアナゴたち。穴から出ればいいのにと思ってしまう

 「水族館や動物園に喜んでもらい、視聴者にも楽しんでもらって、パブリシティにもなる。僕が傷つくだけで、色々なメリットを与えることができる素晴らしい企画」(長尾氏)。

 長尾氏“だけ”が傷ついているのは、基本的に彼が成果を独り占めしたいからにほかならない。そんな、ある種人間の正しい姿を体現している長尾氏にも、この企画で頼りにしている人がいる。

 「ダイオウグソクムシは、彼女の存在があったからヒットしたようなものなんだ。コンテンツを面白くキャッチーに外部に配信する『西本』がいてこその成功だっていうのを、僕は声を大にして言いたい」(長尾氏)。

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