仕掛け人は「2人」いた--“グソクブーム”誕生の舞台裏 - (page 5)

井指啓吾 (編集部)2014年09月13日 10時00分

 長尾氏はニコニコ生放送での番組制作の秘訣として、「テレビと同じものを流してもつまらない。テレビでは映さないもの、むしろ映しても意味がないんじゃないかというような変わったものにフォーカスを当てるのがいい」と強調していた。

 それを実践したのが動物を主役にした長尺・定点生中継なわけだが、これはニコニコのコメント機能とも非常に相性が良かった。

 「コメントなしで観ていたら面白くなかったと思う」と西本氏。視聴者がコメントを使って「1号たんはかっこいい」「9号たんは優しいやつだ」「あいつは今あいつの上に乗っかろうとしているぞ」とストーリーを作ってくれたおかげで、ダイオウグソクムシという無背景の深海生物にキャラクター性がもたらされた。テレビでよく見かけるタレントでは、このプロセスは楽しめない。

  • 放送を通してそれぞれのキャラクターが確立していった

  • 大惨事

  • 正面を向くNo.1

 また、生放送ページがチャットルーム化したこともヒットの要因と言える。「グソクがまったく動かなかったとしても、『ぐっそもーにんぐ』と言って入ってきて『今日は俺あれ食べる』といえばそこで誰かがコメントでリアクションし、会話が成立する。グソクというコンテンツがあってこそだが、その場を楽しむユーザーのコミュニティがそこで形成されていました」(西本氏)。

  • 余談だが、最近の筆者のパワーフードがこちら。発音するとわかりやすいが「ツィンアナゴ」はチンアナゴのことだ

 長尾氏がもう一点力説していたのが、非常に専門的な話にはなるが、ヒットする動物の選び方だ。それは、見た目の気持ち悪さ――くわしく言えば、「気持ち悪いんだけど見たい」という感情が、長時間見ていると次第に「あれ、かわいいんじゃないか」と変化する動物。つまり気持ち悪さと愛らしさは表裏一体で、これを備えている動物が、長尺・定点生中継にふさわしい。

 ダイオウグソクムシにはそれがあった。そして長尾氏は、ハダカデバネズミにもそれを見出した。では、どう見分けているのか。確かな審美眼を持ち合わせていなければ到底困難に思える。

 「ポイントとしては、夜に道ばたでそいつに会ったときに泣くか泣かないか。たとえばダイオウグソクムシは確実に泣くと思うし、ハダカデバネズミなんて号泣するよね、という」(長尾氏)。

 わかりにくいので西本氏の言葉を借りると「突っ込みどころ、隙のある要素を持った動物が良い」ということだ。

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