編集記者のアンテナ

仕掛け人は「2人」いた--“グソクブーム”誕生の舞台裏

井指啓吾 (編集部)2014年09月13日 10時00分
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 CNET Japanの編集記者が日々の取材や暮らしの中で気になったサービスやユニークなガジェット、驚きの技術、ウェブで話題のトピックなどを、独自の視点で紹介していく連載「編集記者のアンテナ」。第3回はウェブサービスを中心に取材をしている井指が担当する。

 ここ2年のあいだに最も有名になった深海生物といえば、ある一匹の個体が絶食していたことから話題を呼び、その奇怪な見た目とじっと動かない様子が妙にネットユーザーの心を揺さぶったダイオウグソクムシだ。

 来場者数75万78人、コメント数132万490件――。2013年3月、インターネットの海の底から変な波に乗ってニコニコ生放送にやってきた彼らは、鳥羽水族館の水槽で、7対14本の脚を甲羅の中に抱え込み、半ば閉じたように見える真っ黒な瞳でどこか一点を見つめ、寂然たる姿勢を48時間も保ってみせた。


ダイオウグソクムシ(No.1)初登場時の様子

 たまに動いたり、跳んだり跳ねたりひっくり返ったり、砂の中に顔からつっこんでみたりすれば、歓喜した視聴者による凄まじい量のコメントが右から左へと流れた。感動を分かち合った視聴者の間で、いつしか「ぐっそもーにんぐ」「ぐっそばい」なる挨拶が生まれた。ダイオウグソクムシを介した新たなコミュニケーションが、そこにはあった。

 当初、ほぼ動かないものを見続けるという異様な光景に「きがくるうとる……」と困惑していた筆者も、気がつけばダイオウグソクムシの動きに一喜一憂していた。その場の居心地も良かった。「あのお腹の部分はどうなっているのかな。もっと知りたいな、グソクたんのこと」――筆者が“グソラー(ダイオウグソクムシを好きな人)”になるまでに、48時間は十分すぎるほど長かった。

 今では豊富なグソクグッズが販売されている。ぬいぐるみもiPhoneケースも、ゲームアプリもある。ハローキティとコラボレーションを果たしたり、“グソドル”というのを生み出したりもした。


ダイオウグソクムシを仕掛けた長尾健太郎氏

 「ニコ生の中継を観てダイオウグソクムシに興味を持った方は多い。鳥羽水族館からは、放送後に来場者数が増え、グッズも売れるようになったと聞いている」――ダイオウグソクムシの生放送を仕掛けた張本人・ドワンゴコンテンツ営業本部の長尾健太郎氏はこう話す。一方で「お金を払って楽しむのが水族館の本来のありかたであり、当初はほぼ無料でネットから見えてしまう事を危惧する意見もあった」とも。

 枕が長くなったが、ここからはダイオウグソクムシをはじめとする長尺生中継企画の裏側を長尾氏らの話をもとに紹介する。

 なお、もちろん「ヒットコンテンツを作るにはどうしたらいいの?」とも問うているが、一言目で「偶然の産物。戦略は特になかった」との示唆に富んだ言辞をたまわったため、妖怪ウォッチでいう「クロスメディア戦略が――」のような話はできなかった。念のため、時間のないビジネスパーソンのために要点のみをお伝えすると、

  • プラットフォームに合ったコンテンツを考えよう。ニコ生でいうと「突っ込みどころのあるコンテンツ」だ。コメント機能と相性がいい
  • 制作側は宣伝・広報ともっと仲良くしよう。情報の拡散力が上がり、それが自分の成果につながる

 以上だ。

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