就職活動にソーシャルメディア利用する「ソー活」──について2013年に書いた。現在、ソーシャルメディアを駆使した新たな求人方法を試す米国企業が登場している。
Amazonが買収した靴ネット販売のZapposが、先月、自社のサイトを含め求人情報をネットに掲載するのを一切やめ、代わりに求人のためのオンラインコミュニティを立ち上げた。
Zapposへの入社希望者は、Zappos Insidersというオンラインコミュニティに登録して“インサイダー”となる。コミュニティに登録するには「テクノロジー」「マーチャンダイジング」などチーム(部署)を選び、履歴書をアップロードするか、LinkedInまたはFacebookを通じて行う。
コミュニティに加入すると、“アンバサダー”と呼ばれるZapposの採用担当者6人や他の社員のプロフィールが閲覧でき、メッセージを送ることができる。社員とソーシャルメディアでつながっていれば、その社員に紹介を頼むことも可能だ。
ただし、登録すれば採用担当者が目を向けてくれるわけではなく、入社希望者はコミュニティやソーシャルメディアを通じ、自己PRを示すことが求められる。ビデオカバーレターをアップロードしたり、採用担当者のTwitterをフォローしたり、隔週で行われるTwitterチャットに参加したりして、積極的に存在感を示すことが必要なのだ。その他、FacebookやInstagram、Pinterestでも同社の社員と交流ができる。近日、グーグルハングアウトでも、採用担当者や社員らとリアルタイムでやりとりができるようになるそうだ。
同社の現社員は、FacebookやLinkedInでつながっている知人友人が、コミュニティに加入すれば、その人に関しコメントを投稿することもできるが、これは採用担当者のみ閲覧可能である。
こうした新たな試みは従来の履歴書を送ってもらってデータベースでスキャンするといった無味乾燥とした人事選考ではなく、入社希望者にはコミュニティを通じ企業風土を学んでもらおうという意図から生まれたものだ。同時に、採用担当者はコミュニティでのやりとりを通じ、その人が企業風土に合いそうか、どのポジションにはまりそうかを見ることができる。そして、人材が必要になれば、コミュニティ参加者の中から適切な人材を選ぶという仕組みだ。
Zapposでは、2013年に3万1000人から求人応募があったのだが、採用されたのは、そのうち1.5%だったという。採用されなかった人の大半は、データベースでふるいをかけられ、自動的に採用不可の通知が送られるが、こうした機械的な対応に悪感情を抱く人もいる。彼らの中には、Zapposの既存客、また潜在顧客もいることから、こうした事態は避けたい。また、企業が適格でない人材を雇ってしまった際のコストは、5万ドル以上になる場合もあるといわれており、適材適所を可能にすることによって離職率を下げる狙いもある。
さらに、採用担当者が求人要件を満たさないような応募者に無駄な時間を割くよりも、コミュニティで適材を発掘する方が効率がよい。こうしたオンラインコミュニティは”Talent Community”(人材コミュニティ)と呼ばれているが、クラウドベースの人材採用プラットフォームを開発している会社では、これをキャリアのためのプライベート・ソーシャルネットワークと考えているそうだ。
こうしたプラットフォームを利用している米企業は他にもあるが、求人情報を完全に廃止したのはZapposだけで、他社は求人情報掲載など他の求人方法も併用しているという。
というのも、こうしたコミュニティの成果は、まだ未知数だからだ。たとえば、ネットでのやりとりにも時間がかかり、採用担当者の時間は本当により効率的に使われるのか。必要な人材がコミュニティで見つからなかった場合、どうするのか。求職者はコミュニティに登録後、何カ月経っても声がかからなくても参加し続けるのかといった疑問があり、今後の動向が注目される。
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