教育機関向け「Office 365」、170万人突破--学内ソーシャルも無料に

 日本マイクロソフトが提供する教育機関向けクラウドサービス「Office 365 Education」の国内導入実績が170万人を突破した。教育機関向けでは、Googleを抜き、国内最大級の無償のクラウドサービスとメールサービスとなった。5月22日に発表された。

 日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター統括本部 文教本部長の中川哲氏は「現在、国内100大学でOffice 365 Educationを利用。高等教育機関の3人に1人が利用している。他のサービスから乗り換えたケースも少なくない」と現状を解説した。

卒業後もメールで結ぶ

 Office 365 Educationは、2012年6月から教育機関向けに無償で提供している。メールやウェブ会議、ドキュメント編集、ストレージ、グループウェアなどを利用できる。

 当初は徳島大学や関東学院大学などの大学を中心に導入が進んだが、2013年以降は教職員の情報共有基盤としての採用が加速。大阪府教育委員会や福岡県教育委員会などが普通授業でのICTの基盤として導入している。児童や生徒などが、在校中だけでなく卒業後も安心して利用できるメールサービスとして、ウェブ会議システムを活用した遠隔授業や教職員の間の情報共有、校務支援などでも広く利用されているという。

中川哲氏
日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター統括本部 文教本部長 中川哲氏

 「企業では退職した人とつながるということはないが、学校の場合には卒業生を結ぶことが重要な要素になる。何万人、何十万人を結んだメールサービスを構築し、管理費を削減しながらBCP(事業継続計画)対策できるという特徴がある」(中川氏)

 同日付でOECD東北スクールでOffice 365 Educationを導入したことも発表。9市町村に分散した100人の中高生が共同作業やプレゼンテーションに利用できるようにしたという。

 Office 365 Educationは、卒業生が50Mバイトの個人用メール、予定表、アドレス帳、スパム対策やウイルス対策が無料で利用できる「卒業生用」、これらの機能に加えて、最大1万サイト作成できる学内ポータル機能、ウェブ版Officeの「Office Online(旧Office Web Apps)」、25Gバイトの個人用ストレージ機能、インスタントメッセージ機能や在席情報、オンライン授業機能などを教職員、学生向けに提供する「A2」、Officeドキュメントやメール保護機能、ボイスメール、サブスクリプションで最上位のOfficeを使える「Office 365 ProPlus」を提供する有料サービス(教職員410円、学生230円)の「A3」、それにエンタープライズボイス機能を追加した有料サービス(教職員540円、学生270円)の「A4」を用意している。

 2013年12月からは、教育機関向けの特典として「Student Advantage」の提供を開始。この特典を通じて30万人の生徒や児童、学生がOffice 365 ProPlusを利用しているという。

 「広く企業で利用されているOffice 365の豊富な機能を無償で利用できること、国内法に遵守したサービスであるため、学内クラウド利用が可能であること、システム運用コストの削減が可能であること、利用条件を満たせば、Office 365 ProPlusを追加費用なく利用でき、複数のPCにインストールできること、預けたデータの中身をマイクロソフトが広告表示の目的などで勝手に分析、利用しないためプライバシーを保護している点などが教育機関から評価を得ている」(中川氏)

個人向けストレージは1Tバイト

 同社では、クラウドストレージ「OneDrive for Business」の容量拡大にあわせて、教育機関が無償利用できる個人向け容量を1ユーザーあたり25Gバイトから1Tバイトへと増強。「保護された環境でより多くの研究情報などを格納することができるようになる」

Caroline Goles氏
日本マイクロソフト 業務執行役員 Officeビジネス本部長 Caroline Goles氏

 新たなエンタープライズソーシャルサービス「Yammer Enterprise」の教育機関向け無償提供も開始する予定であり、学内ソーシャルに活用できるようにするという。日本マイクロソフト 業務執行役員 Officeビジネス本部長のCaroline Goles氏は「Yammerを使ってもらうと、自宅にいながらリアルタイムでコミュニケーションを取り、友人と一緒に宿題ができるようになる」と、その効果を説明した。

 Goles氏はOffice 365の全体的な利用状況を「米国ではFortune 500のうち6割の企業が活用、日本でも日経225銘柄企業の6割が導入している。日本では、130社以上のケーススタディを紹介し、日本の企業ならではの導入効果を示している。日本では全体の約9割が中小企業の導入であり、企業の大きさや業態にかかわらず、クラウドサービスのメリットを享受できる」と説明した。

 「公共分野やNPO(非営利法人)などでも導入されている。教育機関に対しても、企業向けと同じ機能を持ったサービスを継続的に提供しており、導入した教育機関の教職員からも、こうした機能が欲しかったんだという声をもらっている。児童や生徒、学生が将来、世の中で幅広く活躍してもらうための基盤づくりと支援を続けていく」(Goles氏)

 教育分野で情報化に向けた支援を続けている日本マイクロソフトの活動について中川氏は「教員のスキルアップサポート、教育機関向けクラウド基盤の無償提供、学習者向け端末配備支援などを展開している」と解説した。

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