Facebookの最高経営責任者(CEO)Mark Zuckerberg氏は、創業時のハッカー的な発想のモットーから距離を置き、安定性に軸足を置いたより成熟した考えに向かっている。
カリフォルニア州メンローパークに広がっているFacebookのキャンパスを2013年あたりまでに訪れた人であれば、「Move fast and break things」(素早く行動し破壊せよ)という同社の有名なモットーがあちこちの壁に貼られていたのを覚えているだろう。これはハッカーのものの考え方を称賛し、大学を中退した若者たちがこのソーシャルネットワーキング企業を運営しているという事実を思い起こさせるものであった。
Facebookが世の中の人気を集め始めていた時、Appleは人類の進化を促すモノリスのような存在であり、Googleはウェブ分野で急成長している巨人であったが、どちらもFacebookと張り合おうとはしなかったし、おそらく今後もそのような方向には進みそうにない。一方Facebookは動きが速く、リスクに挑み、枠の外で考えることのできる、学生寮から生まれた新興企業であった。創業10年を迎えた現在、同社の本社所在地は「1 Hacker Way」という住所で呼ばれている。
今日のFacebookは、ほとんどが哲学的な部分におけるものであるとはいえ、変わってきている。ハッカーを礼賛するモットーが書かれたポスターはそう遠くない将来、Facebookの従業員にとって過去を懐かしむ以外の何ものでもなくなるはずだ。そして最も重要なこととして、CEOのZuckerberg氏が、米国時間4月30日に当地で開催された年次カンファレンス「F8」の壇上で、このモットーとの決別を公言した点が挙げられる。
新しいモットーは「Move fast with stable infrastructure」(安定したインフラとともに素早く行動せよ)というものだ。Zuckerberg氏は「(このモットーは)『Move fast and break things』ほどインパクトがないかもしれない。しかしこれが現在のわれわれのやり方だ」とにやっと笑いながら述べた。
また、同氏は「開発者として、素早く行動することは非常に重要であったし、行動に伴う多少のバグがあったとしても大目に見ていられた」と付け加えた。しかし今やそうではない。企業の成長とともに、バグ修正にかかる時間が増大し、挑戦的な開発態度を維持できなくなってきたのだ。
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