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グローバル展開するなら米国に本社が必要--米Six Apart 関CEO - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)2014年04月17日 14時58分

--米国に本社機能を移転したのはなぜか。

 もともと米国の会社だったということもあり、米国にも大手を中心に多くの顧客がいます。構築や運用といったニーズも多いのですが、現地の事業者を紹介したりパートナーに任せるというのが現状でした。本拠地が日本ではどうしてもサポートが弱くなってしまうという問題があったのです。また、米国はマーケットが大きく、意志決定が早いことも特長です。しかし日本から米国へのオペレーションは難しく、米国特有のニーズを日本で汲み上げることも現実的ではありません。

 そこで、本社機能を米国に移転し、その下に米国支社、日本支社を置く形にしました。Movable Typeは認知度がある程度高いのでで、Movable Typeをメインにシックス・アパートの他の製品も展開していくという狙いです。ゆくゆくは米国で製品を開発したいと考えています。また、米国に拠点を移すことで、米国以外への営業機会も得られると思います。日本語のニュースは日本でしか読まれませんが、英語のニュースは海外の多くの国で読まれますからね。

 シックス・アパートは、サンフランシスコで創業されました。今回の米国移転を西海岸でなくニューヨークにしたのは、既存のお客様が多いことと新規顧客の開拓に有効であることはもちろんですが、ユーザーが多いということも理由の1つです。シリコンバレーには開発者は非常に多いのですが、自分でアプリを作れるため、Movable Typeは使われません。開発拠点を置いて技術者を集めるのであれば有効ですが、サービスやサポート、新しいビジネスを展開していくには、シリコンバレーでは費用対効果が見合わないのです。また、ヨーロッパに近いこともニューヨークのメリットと言えます。

英語表記でアプリの見え方が変わる

--米国展開する上での課題は。

 グローバルに展開する企業であれば、必ず起きるであろう問題が意思疎通です。日本と米国では商習慣も文化もまったく異なりますので、基本的な考え方の部分から共有する必要があります。そこでシックスアパートでは、以前からビデオ会議によるコミュニケーションを重視しています。米国は電話文化で、何事も電話で済まそうとしますが、ビデオであれば表情などより多くの情報を得ることができ、意思疎通にも有効です。日本では会議というとすぐに1カ所に集まろうとしますが、米国ではリモートが基本です。

 また、製品開発のマーケティングにおいても、グローバルを意識することが求められるようになります。これは意識していても難しい問題ですが、私の場合はiPhoneやPCを英語設定にしています。すべて英語表記になると、アプリの見え方が変わってきて、英語表記に最適なデザインやユーザーインタフェースを意識するようになります。日本と米国では通貨が違いますので料金表示も異なりますよね。そういった文化の違いは、いくら想像してもわかりません。想像だけで詳細な仕様を決めてしまうと、現地の人には使いにくいものができてしまいます。

 さらには、日本中心で海外展開すると、日本での売り上げを最大化しようとしてしまい、海外では使われない日本の独自機能が増えてしまいます。拠点を米国に置くことで米国に最適化した開発が可能です。米国の市場に軸足を置いて、その上で他国の要望に対応していくスタンスになり、日本もそのひとつという位置付けになっていきます。一方で、米国では最新のデバイスやサービスにいち早く触れられるというメリットがあります。初代のiPhoneの販売は米国のみでした。米国で流行してから日本に導入しても遅いので、米国のマーケットは欠かせません。

 今回の米国移転にあたって、ここ1年間で米国人の社員を2人、雇いました。1人は日本に来て長い人でしたが、もうひとりは海外は日本が初めてという人でした。その人たちと話すだけでも、ギャップを感じることがあります。2011年にシックスアパートが日本だけで完結したときに、距離が遠い人に対し、無意識に優先順位を下げてしまい、視野が狭くなるということを経験しました。しっかり意識しないとギャップは埋まりません。米国移転によって、意志決定に英語を使うようになります。こういった環境がないと、グローバルで競争していくことは難しいと考えています。

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