この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。
前回に続き、D2Cグループのプランニングブティックであるカケザンが、モバイルを主軸としたデジタルマーケティングの在り方について説明する。
D2Cが実施した「モバイル利用動向調査/マルチデバイス利用動向調査」では、携帯電話所有者のうち43.3%がすでにスマートフォンユーザーであるという。10~30代では男女とも、過半数がスマートフォンを利用している。
また野村総合研究所が2013年に実施した調査によれば、2016年にはスマートフォンの個人普及率は約7割に達する見込みだ。ビデオリサーチの調査からメディア接触率を見てみると、まだテレビが圧倒的に多いものの減少傾向が続いていて、現在では57.9%。増加傾向が続いているPCは15.8%で、モバイルは11.9%を占めている。
下の図を見てほしい。有名なキャズム理論だ。全体の16%を超えるとキャズム超えということなので、スマートフォンの普及はすでにキャズムを超え、アーリーマジョリティの段階にあるといえる。早晩、レイトマジョリティも巻き込んでいく公算だ。
つまり、すでにスマートフォンもマスマーケットを形成するデバイスであるといえる。となれば、マジョリティへの訴求が重要なナショナルプロダクトにしても、すでにスマートフォンの活用は様子見の段階ではなく、必須の段階と言える。マジョリティをつかむのはマーケティングの鉄則であるから、スマートフォン施策を展開するのがリスクなのではなく、すでにスマートフォンをマーケティングに活用しないほうがリスクがあると考えたほうがいい。
2013年5月に発表されたWeb広告研究会の月例セミナーレポートを見ると、この2年でスマートフォンからのグーグル検索の数が5倍に増えており、PCの検索数を上回っている。
Facebookでは、国内にデイリーアクティブユーザーが約1400万人いるが、このうちの93%にあたる1300万人がモバイル利用だ。ちなみに、モバイル利用率は日本が世界一だ。Twitterは日本のデータを公表していないが、グローバルで見ると76%がモバイルからのアクセスだという。あるいはYouTubeの再生の2回に1回がスマートフォンからだ。視聴時間も決して短くない。
前回紹介したAISAS(「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(購買)」「Share(情報共有)」)の図にこうした状況を当てはめると、InterestやSearch、さらにShareの段階でもスマートフォンは主流になりつつあることがわかる。こうした状況で自社サイトがスマートフォンに最適化しているかと聞くと、57.6%が対応していると回答している。対応済ではなく、予定を含む。逆にいえば、全体の40%はその計画すらないことになる。
さらにD2Cの同じ調査によれば、スマートフォンユーザーの53%はスマートフォンからネットショッピングをしたことがあると答えた。楽天は売上高こそ発表していないものの、モバイルでの決済額は年々伸びてきており、前年同期比では48.4%の伸びだという。ZOZOTOWNでも、直近のデバイス別出荷比率でモバイルがPCを抜いたところだ。女性やファッションといったキーワードの通販サイトにはいち早い動きがあるものだ。
店内において日常的にスマートフォンで商品などを検索している人はまだ22.6%となっているが、たまに検索する人を含めるとこれが60.6%に膨れ上がる。消費シーンにも、明らかにそうしたスタイルが増えてきているわけだ。したがって、eコマースだけでなく、店頭も含めた広い意味での購買行動という側面で、スマートフォン活用の機会はさらに広がっているといえそうだ。
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