欧州宇宙機関(ESA)初の惑星探査機「Mars Express」は、火星の写真撮影を開始してから10周年を迎えている。同探査機は、搭載された高解像度ステレオカメラ(High Resolution Stereo Camera:HRSC)で得たデータを使用して、ミッションの開始以来、数多くの画像を送り返してきた。
HRSCは、約10mの空間分解能を持つカラー画像や3D画像として火星を撮影している。一部の特別な地域では、さらに詳細な2mの空間分解能での撮影を行った。このカメラの最大の強みの1つは指向精度の高さだ。空間分解能が異なる2種類の写真を組み合わせ、さらに、火星の地形をフルカラーで明らかにする地下探査レーダ高度計(Mars Advanced Radar for Subsurface and Ionospheric Sounding:MARSIS)によって得られた3D斜視図を用いることで、高い精度を実現している。
HRSCの研究責任者であるドイツ、ベルリン自由大学のGerhard Neukum氏は、次のように述べている。「2mの空間分解能を持つ写真を、空間分解能10mの帯状の写真に組み込むことで、どこを観測しているのかを正確に知ることができる。2m分解能チャネルによって、地表の様子を非常に詳しく知ることができるだろう」
これはMars Expressが撮影したヘベス谷内部のメサ(卓状台地)のクローズアップ写真だ。表面の物質が谷底に崩れ落ちており、丘の斜面に沿って、水平方向に細かな層が見える。おそらくこれは、風によって飛ばされたちりと古代の湖沼堆積物の混合物だろう。さらに、より古い時代の大地のなごりの地形も見える。
提供: ESA/DLR/FU Berlin (G. Neukum)