進化するApple Storeとスマホシェア率動向--松村太郎のApple一気読み

 12月2日~12月8日のAppleに関連するCNET Japan/ZDNet Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。

量販店の売り場も、Apple Storeと同様のデザインに変更し始めている
量販店の売り場も、Apple Storeと同様のデザインに変更し始めている

 先週、東京に1週間滞在した。東京でさまざまな人と話す中で、Appleも含め、スマートフォン市場の進化が一定の程度にとどまったことについて、「ある種の納得感と、期待や関心が薄れたことへの失望感とが入り乱れた1年だった」との感想を多く聞いたことが印象的だった。

 AppleはiPhoneを64ビットプロセッサへと進化させ、OSのデザインも一新。今までであれば驚きを持って受け止められるようにも思えたが、iPhone 4S、iPhone 5の端末としての完成度を背景に、そこまでの大きなインパクトではない、との印象を強めたようにも思える。

 それだけスマートフォンが生活の中に入り込んでいることの表れにも見える。そろそろ2014年の足音も聞こえ始めた師走の中盤、それでは先週のニュースを見ていこう。

進化するApple Store

 Apple Storeは、ハードウェアメーカーとしてのAppleがブランド戦略を打ち出すツールであるとともに、ユーザーが製品にいち早く触れ、理解するための場として、重要性を増している。iPhoneやiPadなどの全く新しいカテゴリの製品を世に広める起点でもあり、デザインを進化させたMacBook AirがAppleの触れ込み通り「驚きの薄さかどうか」を確かめる場にもなった。

 米国ではオシャレなショッピング街やモールにあるブランドショップとして、日本では高級ブランドのブティックとして、国ごとに展開は違うが、店舗デザインにこだわり、街の1つのランドマークになるような建物として展開している。現在日本には、東京に2店舗、それ以外の都市に5店舗の計7店舗が展開中だが、もう1店舗2014年にできる予定だという。

 また日本では、家電量販店の一区画をAppleショップとして展開している。11月21日に秋葉原のヨドバシカメラのAppleショップに続き、12月7日にはビックカメラの新宿西口店と川崎ラゾーナ店が改装された。また米国では、BluetoothとiPhoneを使った「iBeacon」で顧客への迅速な対応や情報提供を始めている。

 米国では、小売店として床面積あたりの売上げだが最も高いApple Storeの体験的、技術的進化が、まだまだ続きそうだ。

ビックカメラ、「Appleショップ」をリニューアル--新宿西口店とラゾーナ川崎店で(12月5日)
この空間は「アップルの世界観」--ビックカメラ店長に聞くAppleショップリニューアル(12月6日)
アップル、「iBeacon」利用サービスを米国直営店に導入--近くにある商品の情報などを提供(12月7日)

Appleはソーシャルリスニングを始めるか?

 TwitterやFacebookなどの発達によって、「情報発信者」などと気負いすることなしにブランドについての話や製品について感想を手軽に述べられるようになった。そしてこれらソーシャルメディア上の情報を集め、分析し、ユーザーや潜在顧客とコミュニケーションをとっていく──といったことを多くの企業が取り入れ始めている。

 Appleはこれまで、メディアとのコミュニケーションも限定し、ソーシャルリスニングについてはむしろ消極的だった。秘密主義、サプライズといった手法として、ユーザーからもそのことを理解されており、それだけにソーシャルメディア分析を行うTopsy LabsのAppleによる買収は、驚きを持って受け止められる。

 TopsyはTwitterの完全なストリームを取得できるFirehouseへのアクセスが認められている企業だ。Appleがどのようにこの情報を活用するのかは不明だが、Twitter上で話題になっている音楽に関するデータの提供に興味を持っている──との予想は、Wall Street Journalの見立てだ。一方でGartnerのアナリストは、より広範にAppleが顧客の声を理解するために使うのではないか、との予測をしている。

アップル、ソーシャルメディア分析のTopsy Labsを買収か(12月3日)

iPhone、米国市場での首位を堅持

 Appleにとっては嬉しいデータが出てきた。8月から10月の米国スマートフォン市場についてcomScoreが照査したところによると、Appleの販売シェアは40.6%を獲得し首位を堅持した。ライバルとなるSamsungとMotorolaもシェアを拡大し、LGとHTCは下落している。プラットホーム全体で見ると、Androidが52.2%と以前半数を確保した。米国のスマートフォン市場は1億5000万人の規模で、モバイル市場全体の62.5%にあたる。

 米国での勢力は持ち直しつつあるが、この勢いで中国市場での影響力も高めたいところだ。Appleは、中国にある世界最大の携帯電話会社China MobileでのiPhone販売を年内に始める模様だ。7億人を超える加入者がiPhoneをより手軽に購入できるようになれば、米国でのスマートフォンユーザー全体の数を簡単に上回ることが出来るかもしれない。もちろんこの市場ではSamsungなどのライバルのほか、中国の低価格端末メーカーがひしめき合っている。

 シェア拡大と同時に、最新のiOSへのアップデートの状況は、Appleが保つアプリプラットホームの魅力を高めるために重要だ。iOS 7のリリースから3カ月が経とうとしているが、iOS 7の割合は全体の74%と順調に伸びている。

アップル、8〜10月の米スマートフォン市場で1位を堅持--コムスコア調査(12月6日)
アップル、「iPhone」販売でChina Mobileと合意か--WSJ報道(12月6日)
「iOS 7」、全iOS端末の74%に導入(12月6日)

iPhone 5cは他社ユーザーを獲得している?

 64ビット、指紋認証など、派手にハードウェアの進化を見せたiPhone 5sに比べ、iPhone 5cはその美しくカラフルな端末デザインと低価格といった魅力をキチンと評価してもらえていないように見える。販売情報を見ても、ハイエンドのiPhone 5sに興味が集まっているようだが、興味深いデータがある。

 Kantar Worldpanel ComTechによると、iPhone 5sの所有者は8割が前の機種からのアップグレードだったという。これまで大量にiPhoneを販売してきたAppleからすれば、彼らが買い換えればそれなりの販売データを作ることができる。

 一方興味深いのがiPhone 5cだ。こちらの購入者は、ほぼ50%がSamsungやLGといった競合ブランドからの乗り換えだそうだ。さらに、iPhone 5cの所有者数の平均年齢層は38歳だったという。安いから若者向け、というわけではなく、さほど刺激的なスペックを求めない大人に選ばれているというデータが透けて見える。

 筆者は、データ通信料金さえもう2000円下げられれば、ドコモが世界で最もiPhone 5cを販売する携帯電話会社になるのではないかと考えている。今回の記事は、乗り換え組やより高い平均年齢というデータによって、それを裏付けるものになるのではないかと思う。

「iPhone 5c」購入者、半数は競合ブランドからの乗り換え--Kantar調査(12月3日)

その他

アップル、顔認識による端末制御技術の特許を取得(12月4日)
C・アイカーン氏、アップルに自社株買い拡大を要求(12月5日)
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「Siri」で楽曲再生などを指示できるスマートドック--アップルの特許出願書類が公開(12月6日)
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