組織の透明力

リーダー不在で数万匹が整然と動く--昆虫の驚異に学ぶ組織を動かすシンプルなルール - (page 4)

斉藤徹(ループス・コミュニケーションズ)2013年11月21日 07時30分

シンプルさを突き詰めよう

 人間は、昆虫よりはるかに有能で器用なために、物事を複雑に考える傾向がある。そして時とともに複雑化が進み、組織も製品も衰退していく原因となる。昆虫たちから学べる最大のエッセンス、それはシンプルさの追求だろう。

 Appleを世界最高の会社として蘇らせたSteve Jobs。彼の最大の功績はAppleとその製品をシンプルにしたことだ。彼は禅の思想と日本の伝統文化からシンプルさの価値を学んだ。

シンプルであることは、複雑であることよりも難しい。

物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を整理しなければいけないからだ。

だが、それだけの価値がある。なぜなら、ひとたびそこに到達できれば、山をも動かせるからだ。

 Jobsはこう語り、生涯をかけてシンプルな美しさを追及し続けた。

 「KISSの原則」という言葉をご存知だろうか。KISSとは「Keep It Short and Simple (簡潔に、単純にしよう)」の略であり、なし崩し的な機能追加によって肥大化する醜悪な仕様を非難し、シンプルさの大切さを説いた言葉だ。ソフトウェア業界、家電業界、携帯業界など、この言葉を教訓とすべき分野は多岐にわたる。

 なお、このKISSの原則は、もともとLockheed(ロッキード)で軍用機開発の特命を受けたSkunk worksの初代ボス、Kelly Johnsonらによって作られた言葉だが、最近では少し違う略語の方が存在感を増して広がりつつある。複雑さに走る僕たち人間への戒めとして、今、はやりつつあるこの言葉をみなでかみしめたい。

 Keep It Simple, Stupid ! ?  シンプルにしておけ、この間抜け野郎!


あとがき

 僕が昆虫の生態に魅せられたのは、もう20年以上も前のことです。きっかけはNHKサイエンス・スペシャル『生命40億年はるかな旅 ? 昆虫たちの情報戦略』の映像でした。そこには、他生物の一線を画した昆虫たちの進化と、その驚くべき情報戦略が生き生きと描かれていました。そこで学んだ昆虫のシンプルな情報戦略は、起業家だった僕に大きな衝撃を与えるものでした。以下、この記事を執筆するにあたって参考にした文献をご紹介いたします。

  • 『生命40億年はるかな旅 - 昆虫たちの情報戦略』 (NHK出版)
  • すごい虫のゆかいな戦略 (講談社)
  • 働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
  • 昆虫はスーパー脳 (技術評論社)
  • 創発 (ソフトバンク・パブリッシング)
  • Think Simple (NHK出版)

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斉藤 徹
ループス・コミュニケーションズ
1985年3月慶應義塾大学理工学部卒業後、同年4月日本IBM株式会社入社、1991年2月株式会社フレックスファームを創業。2004年同社全株式を株式会社KSKに売却。2005年7月株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。ソーシャルメディアの第一人者として、ソーシャルメディアのビジネス活用、透明な時代のビジネス改革を企業に提言している。講演回数は年間100回を超える。「BEソーシャル ~ 社員と顧客に愛される5つのシフト」「ソーシャルシフト ~これからの企業にとって一番大切なこと」「新ソーシャルメディア完全読本」「ソーシャルメディアダイナミクス」など著作は多数。

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