大勢の観光客でにぎわうロンドンのリージェントストリートにあるApple Storeは、豪華な装飾が施された建物の中にある。店舗正面は4つのガラスの部分に凝ったデザインで分けられていて、それぞれにAppleのロゴがついている。こうしたロゴがなければ、混み合った店内の様子には気づかないまま、ただ通り過ぎてしまうかもしれない。
これと全く対照的なのが、ニューヨークの5番街のApple Storeだ。ミニマリズム的なガラス張りの立方体という同店舗は、Appleが400店舗を越える帝国をどのように築いてきたかを示す好例である。同社のどの店舗に入っても、出てくるときに手にしているガジェットは同じだが、それぞれの店舗に他にはない特徴がある。
ロンドンのApple Storeと同じ通りの少し行ったところにBurberryの店舗がある。その店舗自体には贅沢な外装が取り付けられているが、つややかなアルミニウム製ガジェットが木のテーブルの上に置かれているのではなく、ハンドバックや衣類が上品で温かな雰囲気に包まれて陳列されている。
こうしたロンドンの店舗を通して、Appleの小売帝国の責任者に指名されたばかりのBurberry最高経営責任者(CEO)Angela Ahrendts氏の考えをいくらか知ることができる。2006年からBurberryのCEOを務めてきたAhrendts氏は、感情に訴えるショッピング体験への理解をもたらす。それはBurberryが醸し出しているものであり、Appleが何としてでも失わないようにしているものだ。
小売コンサルタント会社McMillan DoolittleのシニアパートナーであるNeil Stern氏は、次のように述べている。「Apple Storeは間違いなく素晴らしい成功を収めている。しかし最近4年から5年は、実際のブランド構築に貢献してきたとは思えない。Ahrendts氏はそのつながりをより直接的なものにできると思う」
Appleは、前任者のJohn Browett氏を約1年前に解任して以来、同社の小売部門を率いる新しい幹部を探し続けてきた。Browett氏が小売部門を担当したのはわずか9カ月間だ。その役職は、Steve Jobs氏とともに初期のApple Storeを考案したRon Johnson氏が、J.C.Penneyのトップになるために退職して以来、空席のままだった。そのJohnson氏も、J.C.Penneyの再生に失敗し、結局解任されている。Ahrendts氏はAppleのオンラインストアとオフライン店舗の両方を運営し、シニアバイスプレジデントとしてCEOのTim Cook氏の直属となる。Ahrendts氏の入社は2014年春とされている。
Appleは同氏とのインタビューを認めなかった。
CNNMoneyによれば、Ahrendts氏は2012年に英国で最も高い報酬を得たCEOだったという。同氏はインディアナ州ニューパレスティーンという中西部の小さな町で育った(PDF)。2010年国勢調査の時点では、この町の人口は2000人をわずかに上回る程度だ。「スピリチュアルな母親と哲学者の父親」に育てられたと自ら語っていることから、同氏が直観を重視するのも驚きではないだろう。3月にハリウッドで行われたTEDxでの講演で、Ahrendts氏は「ヒューマンエネルギー」の力について繰り返し語った。「感情の電力とでもいうべきエネルギーについて考えてみてほしい。普通の人々を団結させ、彼らの精神を結びつけるという強力な方法によって、並外れたことを実現するものだ」(Ahrendts氏)
そのエネルギーこそ、Cook氏がBurberryのCEOに引きつけられた理由の1つのようだ。Cook氏はAhrendts氏を紹介するためにApple社内に送られたメモで、Ahrendts氏が「ブランドや文化、基本的価値観、そしてポジティブなエネルギーの力によってBurberryを率い、驚異的な成長を実現してきた」と書いている。
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