Googleが「Chrome」ブラウザを発表して世界を驚かせてから間もない頃、Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるSteve Ballmer氏は、その重要性を軽く考えていた。
同氏はオーストラリアで開催されたMicrosoftのカンファレンスで、Chromeの基礎となっているレンダリングエンジンの「WebKit」について「オープンソースは興味深い」と語っていた。
結果的にそれは、単に「興味深い」という以上のものとなった。Googleは今週、Chrome公開から5年目を迎えた。一方のBallmer氏は、Microsoftでの責任ある立場から1年以内に退く予定であることを発表したばかりだ。
Chromeブラウザの公開前からずっとChromeチームの一員であるソフトウェアエンジニアマネージャーのErik Kay氏は、「最初の数週間が過ぎたとき、人々はわれわれを死んだものと思っていた」と語っている。
Ballmer氏の名誉のために言っておくと、半分眠っていたウェブブラウザ市場を大きく活性化させた製品の重要性を認識できなかったのは同氏だけではない。Chromeが公開された時点で、冷笑されながらも支配的な地位にあったMicrosoftの「Internet Explorer」は市場の約72%を占めており、Mozillaの「Firefox」は20%近くだった。「Safari」は7%弱で、「Opera」やそのほかのブラウザが残りの部分を占めていた。
Chrome公開以前のGoogleには、世の中で最も成功し、知名度の高いウェブアプリの1つ、つまりGoogle検索があった。しかしツールバーの提供と、Googleをブラウザの標準検索機能にしてもらうためにMozillaのような企業への支払いを行うほかは、Googleにはウェブの利用を促進するための独自の製品がなかった。
Chromeはその状況を変えた。そして今ではGoogle製品の中で最も利益の大きいものの1つになっている。
Chrome担当のシニアバイスプレジデントであるSundar Pichai氏は2012年のインタビューで、「ユーザーがChromeを使っている場合には、ウェブの利用度が上昇する傾向があるため、検索広告だけでなくディスプレイ広告の表示も増える。そしてGoogle Appsの利用も促進される」と述べている。Pichai氏はその時点では認めようとしなかったが、Chromeユーザーの増加に伴って、Googleのトラフィック獲得コスト(売り上げのうち、同社がパートナー企業に支払わなければならない金額)が下がる可能性は高い。
Firefoxは何年もかけて徐々にInternet Explorerの支配を崩していたが、Chromeが現実味のあるライバルになると予想した人はGoogleの外にはほとんどいなかった。いくつかの報告によれば、Chromeは公開後わずか1日で市場シェア1%以上へと駆けのぼったという。人々は興奮し、ブラウザの世界に何か新しいことが起こるのではと期待した。Googleは、Chromeが重視するのはスピードとシンプルさだと言ったが、それはうまくいった。
「われわれは、アプリケーションを本当に推し進めるためにはその下に素晴らしいプラットフォームが必要であり、場合によってはその下のハードウェアと深いレベルで統合する必要もあることに気付いていた。われわれにとって基盤となるプラットフォームとはブラウザであり、それは非常に重要だった」(Pichai氏)
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