Chromeの大きなセールスポイントはスピードだったが、それだけでは当初はあまり評判にならなかった。Chromeは当初の市場シェアの3分の2近くを2008年末までに失っていた。高速でシンプルというのは良いセールスポイントだったが、人々は同時に、クラッシュを起こさず、少なくとも多少の拡張性があるブラウザを求めていた。
数カ月後、それまでベータ版だったChromeの正式版が公開されると、このブラウザは、大ざっぱな言い方をすれば「目覚ましい上昇」を始めた。それから5年たった現在、その市場シェアは、以前よりかなり遅いペースではあるがデスクトップ環境ではいまだに上昇し続けており、ユーザー数ではFirefoxとほぼ同じである。一方、Internet Explorerの現在の市場シェアは約56%だ。Chromeのシェアの増加分がすべてInternet Explorerの損失分に帰せられるかどうかは疑わしいが、大部分はおそらくそうだろう。
市場シェアのシフトが起こったのは、Googleがその盛り上がりに応えるようなブラウザを開発できたからだ。スピードとシンプルさを重視するという当初からのGoogleの姿勢はほとんど揺らぐことなく、すぐに安定性とセキュリティが重点項目に追加された。Googleは結果的に、これらの4つの領域すべてにおいて常識を変え、その過程で驚くほど広範囲に届くブラウザを開発した。
大変革をもたらすことになった特徴の1つが、6週間という短さのリリースサイクルだ。Chrome以前のブラウザは、多くても年1回の大規模アップデートを行う程度だった。Chromeは公開時点では年4回のアップデートだったが、その回数が2倍になったということは、このブラウザのセキュリティと安定性が2倍の速度でアップデートされることを意味した。
モバイルアプリで行われていた、ユーザーが新しいバージョンをダウンロードする必要のないシームレスなアップデートを模倣することで、Chromeはいくつかの目標を一度に達成できた。セキュリティおよび安定性に関する面倒だが重要な修正が配布される際に、あまり目立たずに済むようになっただけでなく、熱心なユーザーは定期的なアップデートに慣れたし、Chrome自体のエンジニアは新しい機能の導入に集中できるようになった。そうした新しい機能には、ブラウジングのシークレットモード、ページの自動翻訳、サンドボックス機能、「Native Client」、さらにはまだ確立されていない厄介な略語の数々で表される次世代ウェブテクノロジ、つまりHTML5やCSS3、新しいJavaScript API、WebGL、WebRTCなどを比較的簡単に使えるようにするサポートなどがある。
現在の状況としては、Chromeは未来型のウェブテクノロジを追い求める先頭に立っており、このブラウザをOSとして稼働させ、ウェブを唯一利用可能なプラットフォームとする「Chrome OS」のおかげで、Googleは、プロプライエタリOSを動かしているネイティブコードと競争するようなウェブの開発をさらに大規模に行ってきた。
開発者たちはずっと前から、ウェブはプラットフォームだと言っていたものの、Googleはそれを文字通り受け取って、2009年にChromeをOSに変えた。ウェブは突如、そのコンピュータが稼働できる、あるいは稼働するのに必要とする、唯一のプラットフォームとなった。
同時に、このウェブ中心のアプローチは、Chrome OS搭載ノートPCのテスト機「Cr-48」で、Googleがハードウェアの共同開発に積極的に関与する初めての機会につながった。Cr-48はAppleのデザインによく似ていたが、時間がたって、GoogleがそのパートナーにAcerやHewlett-Packard(HP)、サムスンを加えるようになり、ハイエンド機の「Chromebook Pixel」を社内でデザインするようになると、それは問題にならなくなった。
2013年に、Chromebookは米国の300ドル以下のノートPC市場の20~25%をつかむことで、PCの売上傾向に逆らおうとしてきた。
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