「Chrome」公開から5年--ウェブを根本的に変えたブラウザの過去と未来 - (page 3)

Seth Rosenblatt (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2013年09月06日 07時30分

Chromeが時折見せる失敗

 Chromeについて最も素晴らしい点の1つは、Googleがこのブラウザでほとんど失敗をしていないことだが、失敗がないというわけではない。

 Chromeの歴史の中で最も良く知られている間違いは、有料のブログ投稿によるキャンペーンを行ったことだ。これは実際に、Google自らの検索エンジン規則の少なくとも1つに違反していた。

 マーケティング上のごまかしは別として、このブラウザの開発は厳しいものだった。自ら犯した失敗の1つは、Chromeを「Android 4.0」(Ice Cream Sandwich)以上のバージョンに限定するという決断をしたことだ。Androidユーザーの多くはいまだにAndroid 4.0より前のバージョンを使っているため、批判が大きいAndroidの断片化や、Chromeがデフォルトのブラウザとして搭載されていないことによって、モバイルでのChrome普及は遅くなるだろう。

 今後数年で持ち上がる可能性がある別の問題は、Chromeによって開発された新しいテクノロジが、Googleの外ではほとんど歓迎されていないことだ。Chromeの「Native Client」は、ネイティブコードをウェブへと高速かつ安全に移植するためのものだが、まだChromeでしか使われていない。新しいプログラミング言語「Dart」は、Googleファンの間でさえあまり評判が良くない。

 より小さな失敗としては、「Google Gears」のサポートがある。これは最終的には、HTML5が選択されたために廃止された。Google Gearsの名誉のために言えば、ウェブアプリをオフラインで動かすその機能はChrome公開の1年前に世に出ていた。

 Googleによる「Do Not Track」の採用が遅かったことも知られている。Do Not Trackは、ウェブプライバシー支持者にとっては重要度が高まっているが、主要な機能とはいえない。また、検索バーとURLバーが1つになった「Omnibox」を使ってGoogle検索を実行すると、初期設定で検索結果データがGoogleに送られるようになっていることに不快感を示す人々もいる。

Chromeの輝かしい未来

 5年たった現在Chromeは、クロスデバイス対応のGoogleへの入り口であり、「Windows」「Mac」「Linux」、Android、「iOS」で利用できる唯一の主要ブラウザだ。iOSバージョンには完全なブラウザスタックがないために限定的なバージョンではあるが、それでもなお、GoogleサービスがApple製品へと食い込むための手段となっている。

 GoogleとApple、そのほかの企業によるWebKitの共同開発は先般、Googleが独自のレンダリングエンジン「Blink」を開発するためにWebKitから離れると決定したことで終幕となった。このことは、開発者たちがかつてInternet Explorerの「Trident」エンジンに関与していたときと同じように、ウェブではなくWebKit向けにプログラミングしていることについて一部の人々が抱いていた不安を取り除くのに、大きな役割を果たす可能性がある。

 Googleはまた、ウェブから家庭のテレビへのコンテンツのストリーミング用として35ドルの「Chromecast」というHDMIドングルを発売し、予想外の大成功をおさめている。ベータチャンネルにあるChromeの最新ビルドから明らかなように、これにはウェブページを含めることが可能だ。

 しかしHTML5標準が固まり、そのテクノロジの導入が進むにつれて、Chromeで注目すべき点はプラットフォームとしてのウェブの推進だろう。ウェブがブラウザとは独立したアプリとして稼働できる「Chrome Packaged Apps」は、2013年にすでにChromeの開発者チャンネルに導入されている。それは「Chrome Web Store」から入手できるNative Clientアプリを手本としている。またGoogleは、Chromeのモバイルバージョンがデスクトップバージョンと同等になっているなかで、「標準Androidブラウザ」ユーザーをChromeに移動させることにも関心を持つだろう。

 ただし多くの人にとっては、最終的な判断は単に、どのブラウザをデフォルトとして使うか、ということに帰着する。

 Chromeチームに長年在籍するErik Kay氏は、「ほかのブラウザすべてを良くするために十分な競争を持ち込んでいたら、われわれは満足していただろう」と語っている。

 5年前と現在のウェブブラウザ、つまり2008年と2013年のウェブブラウザを比べてみると、Chromeがウェブを根本的に変えたことは明らかだ。今後5年間で、Chromeは皆さんのデスクトップを根本的に変えるかもしれない。

 Chromecastはウェブをテレビにストリーミングする。
Chromecastはウェブをテレビにストリーミングする。
提供:Dan Graziano/CNET

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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