自らの出世のために仲間を見捨てる大和田には、頑として対抗しなくてはいけない。そこで最後に、中野渡頭取に対して、銀行への愛を込めた提言を行いたい。中野渡は「人」を大切にする温厚な人物で、合併後にできた派閥を解消し、銀行内を融和させることに腐心している。性悪説が深く浸透した組織の中で、社員同志の「協調行動」を促しながら「派閥」を解消していくためには、どのような施策が有効なのだろうか。
まずは、協力行動を取る方が非協力行動を取るより得になるよう、個人の損得勘定を変えることだ。協力を促進する「外発的な動機づけ」を導入するのだ。例えば、人事評価の対象を個人からチームにシフトすること。特に個人成果主義は協力行動を削ぐので導入はさけるべきだ。
一方で、人事評価のような「外発的な動機づけ」は、実施している間は協力が促進されるが、社員の自発的な協力意思を減退させてしまうことが心理学研究から分かっている。本来は、社員が自ら協力しあうための「内発的な動機づけ」が望ましいのだ。社会的ジレンマの研究(*2)では、次のような場合に「内発的な動機づけ」が促進されることが明らかになった。
これらに基づき、頭取への社内融和施策をまとめてみよう。ただし現実の銀行内にこれらを導入するには、頭取が断固たる信念を持って組織改革を支持することが絶対条件だ。トップの継続的な支援なくして行内改革は不可能だからだ。
(1) 小さな改革と成功を積み上げていくこと
銀行のような閉鎖的な大組織では、全社を一気に改革することは不可能に近い。そこで段階的なアプローチをとり、小さな成功を積み上げていくことが大切となる。まずはモデル支店をつくり、以下で説明する組織改革をはじめることだ。その成功例をもって、他支店に範囲を広げ、全社横断での職能ネットワーク、本社機構へと改革をすすめてゆく。具体的なステップについては前記事「社員が自ら動き出す組織のつくり方」を参考にしてほしい。
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