データから導き出す「消費者の声」--転換する流通(2)

別井貴志 (編集部)2013年07月26日 14時57分
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 消費者の購買に関わる行動や影響は、オンラインとオフラインの垣根がどんどんなくなっている中、メーカーや卸売り、小売りといった流通市場は、消費者のニーズを的確に捉え、消費体験を価値あることにするために、デジタルデータをどのように活用していけばいいのか――。

 このテーマについて、キリンの経営企画部 新市場創造室 主査である浅野高弘氏、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のエンタテインメント事業本部 販促企画Unit Leaderである中西健次氏、アドビ システムズのマーケティング本部 マーケティングインテリジェンス部 デジタルマーケティングスペシャリストである井上慎也氏の3者で議論した。

 前回は“顧客志向”について、それぞれの考え方を示した。今回は、その顧客、消費者が求めていることをどのように把握し、それをどう商品やサービス、事業に活かしているかを取り上げる。

--中西さん、TSUTAYAでは「顧客中心主義」を実践するために、徹底的にIT投資をしたということですが、具体的にはどういったことですか。

  • カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のエンタテインメント事業本部 販促企画Unit Leaderである中西健次氏

中西(CCC):詳細は省きますが、商品の貸し出し状況をすべて保有しなければならないので、そのためのデータベースの構築と分析の仕組みには力を入れました。また、それらの情報をスピーディーに吸い上げるために、顧客接点であるPOS(販売時情報管理)システムのイノベーションについてはかなりの回数を重ねています。

--「顧客を知る」という場合に、顧客の行動や購入分析はもちろん必要ですが、それだけではなく、「顧客が潜在的に求めていることは何か」という面を知ることも重要だと思うのですが。

中西(CCC):レンタル作品は、作品ごとに借りた方の性別や年代別の属性データが分析できるようになっています。たとえば「もののけ姫」を借りる人は、他のジブリ作品に比べて女性が多い、10代が多い、といった具合に作品ごとに視聴者クラスタの特徴があります。あとは、一方で店舗ごとにも大学の近くでは20歳前後が多いとか、新興住宅地の店舗には若いファミリーが多いなど、それぞれ利用者クラスタの特徴があります。それらのデータを掛け合わせて店舗ごとに最適な品揃えをしているのです。

 そのため、新規出店の開店在庫は、必ずそのお店が持っているポテンシャルと、商品(作品)が持っているポテンシャルを組み合わせて品揃えします。そうすることで、来店してくださるお客さまが求めるものが、常にあるような状態にできるわけですね。お客さんの履歴データを分析すると、最終的に次の出店に生かせるという面があります。

 そして、こうした商品ごとの属性や店舗会員の属性などのデータはすべてのスタッフが見られる環境になっています。

井上(アドビ):解析の専門部隊だけじゃなくてですか?

中西(CCC):当然、専属の部隊がもっともよく活用しますが、私も見られます。個人情報にアクセスできるようなことはもちろん絶対にありませんが、たとえば店舗のスーパーバイザーは、こうした作品やエリアの属性データを参考にします。また、出店の担当者は新規に出店する際はまだお店の属性がないので、その可住地の人口密度などから属性を導きます。「おそらく出店したら1年後にこんな属性のお店になっているだろう。そのためにはこの品揃えを用意しておこう」と予測することも、もう十数年前から取り組んでいます。

  • キリンの経営企画部 新市場創造室 主査である浅野高弘氏

--一方で、キリンのようにメーカーは、直接消費者と接する機会は少ないと思いますが、消費者のニーズをどのように把握していますか。

浅野(キリン):本当はお客様の情報をデータベースとして持ちたいのですが、それに代わるものとして消費者パネルのデータがあります。カテゴリーや商品、消費者のライフスタイルなどの調査を定期的に、ベンチマーク的にやっているというのがベースです。従来から取り組んでいることですが、商品の浸透度やロイヤリティー、購買行動などを継続的にトラッキングしています。

 そして、最近はSNSでプロモーション施策をした際の分析なども取り組み始めました。

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