浅野(キリン):どうでしょうかね。積極的にとまではいえないと思いますが、いくつかの商品で取り組んではいます。カスタマージャーニー(顧客が商品をどこで知って、どう思い、どこで購入したかなど、購買に至までの一連の行動を把握すること)とまではいきませんが、トライアル的に取り組んでいるといったかたちです。
ただし、こうした取り組みは非常に緊急的に大事だという問題意識は持っています。折に触れて個別に実験的にやるのではなく。実際、我々メーカーも、お客さんとの直接接点はオフライン、オンライン問わずにいろいろあるわけです。それをビッグデータとまではいかなくとも、何らかの目的でプールして、データベースのプラットフォームを構築するなど、最新のテクノロジーを活用すれば、メーカーといえども消費者のニーズをくみ取ることに対して、もう少し次元の違うレベルにいけるのではないかと考えています。
井上(アドビ):アドビは、いろいろなツールを開発してきました。そのツールに関して、一応お客さまからフィードバックを受けるようなフォームもありますが、それはごく一部の方の意見しか表われていないのではないかという面も考え、開発者や製品の担当者がお客さまに実際に会って、いろいろなフィードバックを聞くこともしています。あとは、例えばPhotoshopにはいろいろな機能があるけれども、実際にどういう機能が使われているのかといった実際の利用データも集めています。
ただ、おそらくここが難しいところだと思いますが、いろいろなデータを集めればいいという話ではないのです。集めたデータや声から、何を優先してどう改善していくのか、どういう機能を作るのか、どういう使い方にするのかという答えを導き出すのは、正直まだまだ改善の余地のあるところだとは思います。
井上(アドビ):そうです。私はコミュニケーションがメインの担当ですね。宣伝と販促というところでいうと、新しい考え方で取り組んでいます。たとえば、新しい提供方法であるAdobe Creative Cloudについて、訴求ポイントとなる機能やベネフィットをあげていくと、あれもこれもと20~30個になりますが、なかなかこれらすべてをうまく伝えられません。また、米国本社で決められた訴求ポイントが、日本という市場でそのままうまく行くとは限りません。
そのため、実際にやったのは、「初期投資が安い」とか、「月々幾らです」とか、「新しい提供方法では、これ1つで最新のPhotoshopやIllustratorなど、あれもこれも使えます」とか、いくつかのパターンのバナー広告や自社サイトでのコミュニケーションを展開しました。そして、どういった切り口であれば顧客がバナー広告に反応してくれて、どういった情報で価値を理解、納得してもらって最終的には購入してもらえるか、いわゆる反応・コンバージョンを中心に、同じく弊社で提供しているAdobe Marketing Cloudをユーザーとして活用し、いろいろとテストして効果測定しながら「こういうことが受けるようだ」というのを導き出しました。
また、最近では、積極的にソーシャルメディア上でのお客さまの声も集めており、うまくお客様に伝わっていないことなどをフィードバックしコミュニケーションの調整をするようにしています。
つまり、開始前に色々と悩んだり調査でがっつりと固めたりするのではなく、実際にコミュニケーションを展開しながら、お客様の反応を基にPDCAを回していき、「カイゼン」していく考え方です。
そしてこれらの気づきやうまくいった点などを、マーケティング担当者や店頭のポップ、チラシなどの作成を担当している部署にフィードバックしましたが、非常に喜ばれました(笑)。こういう取り組みはそれぞれの部署やチームで行い、なかなか共有されないという面もありましたので、オンラインでテストした結果によってほかの告知や訴求方法が変わっていったのは、ソーシャルや広告、自社サイトなどでお客様の情報をデータで取得できるデジタルマーケティング担当者だからこそ社内に提供できる価値であり、たいへんおもしろい流れだったと思います。
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