1980年代と90年代のホームコンピューティング革命は、大手2社、すなわちAppleとMicrosoftの戦いだった。Appleは当時、新規株式公開(IPO)と「Macintosh」の発表を経て波に乗っていた。
だが、同社は90年代にPC市場のシェアを失い始める。Microsoftは1990年、Macintoshの割安な代替品として「Windows 3.0」を発売した。そして、Appleに大打撃を与えたのは、Macintoshに匹敵するGUIをPCにもたらした「Windows 95」だった。また、Appleは1985年~1996年の間、ビジョンの欠如にも悩まされていた。ビジョナリーリーダーであるSteve Jobs氏が不在だったためだ。Jobs氏は1996年、AppleがNeXTを買収したことでAppleに復帰する。
Appleが自社OSのライセンスをほかのメーカーに供給しないというアプローチを(Jobs氏不在中の短い期間を除いて)守り続ける一方で、Microsoftは自社のOSを複数のメーカーに提供した。そして、Intelの助力を受けて、「Windows」マシンは急速な普及を遂げる。Windowsの勢いが弱まったのはここ数年のことで、その主な原因はAppleの「iPhone」と「iPad」だ。
この「オープン」対「クローズド」(あるいは「断片化」対「統合化」)というアプローチは、多くの論争のテーマになってきた。モバイルコンピューティングに関して、GoogleとAppleが大きく異なる戦術を採用しているためだ。The New YorkerのTim Wu氏は3月、Appleによる「iOS」とiPhoneの全面的な管理は、Steve Jobs氏がいなくなった今、市場における利点ではなく不利な要素になりつつあると主張し、Appleに挑んだ。
結局のところ、ビジョンとデザインスキルが優れていればいるほど、よりクローズドな状態を目指すことができる。過去12年間にわたってほぼ失敗のなかったJobs氏の功績を自社のプロダクトデザイナーが再現できると考えているのなら、突き進めばいい。しかし、会社を経営しているのが普通の人間なら、あるいは自社が極めて予想の困難な未来に直面しているのなら、失敗の経済学はオープンなシステムの方が安全なことを示唆している。
世界で最も有名なAppleブロガーの1人であるDaring FireballのJohn Gruber氏の見解は、Wu氏と異なる。Gruber氏は大胆にも、市場での成功とオープン性の相関関係をWu氏が証明していないと反論し、Wu氏の記事を骨抜きにした。また、「Google Search」が「クローズド」なシステムであるにもかかわらず成功を収めていることをWu氏は無視しているとも主張する。
反証を無視して、オープン性と成功に関連があると独断的に仮定することは、議論を必要以上に複雑化させてしまう。「クローズドな企業の経営者が天才でない限り、一般にオープンであることはクローズドであるよりも大きな成功を収めるはずだ」というのがWu氏の理論だ。オープン対クローズドの議論をその前提から取り除くと、次のようになる。一般に、天才が経営する企業は、そうでない企業よりも大きな成功を収めるはずだ。まあ、妥当な線だろう。
筆者がこれを再び前面に持ち出したのは、Facebookのおかげで、オープン対クローズドの議論が再燃してきたからだ。同社は先週、「Facebook Home」を発表した。Facebook Homeは、スマートフォンをFacebook最優先のデバイスに変身させる「Android」レイヤである。
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