ZDNet Japanで「三国大洋のスクラップブック」という連載を持っている。そこに一度、「アップルのiTV登場を阻む複雑怪奇なテレビ業界」というコラムを書いた。
ピクサーを設立して映画業界に新風を吹き込むなど、Steve Jobsの大きな功績の一つにエンターテイメント業界への貢献があるが、そのJobsでさえ「業界構造が問題でイノベーションの余地がない」と嘆いたのが米テレビ業界だ。
ZDNet Japan側の担当編集者がFacebookページにコラムのサマリーを書いたので、引用してみよう。
(前略)
テレビ業界各社は、率直に言って「フレネミー」の関係で、しかもやたら複雑。握手=提携したかと思えば、いきなり殴りかかる=訴訟したりと、フレネミー同士で始終ケンカしています。米メディア関連や放送・通信関連のトピックを追っていると「一言でいって頭が痛くなる」と書く著者の気持ちも分かります。
メディア業界は長年にわたって、同じような顔ぶれの経営者や企業が表舞台で活躍しています。その各社・者が、それこそモノポリーさながらに事業資産を売ったり買ったりして、同じ名前の会社でも中味がすっかり入れ替わっているような例が珍しくないのです。
今回の主役の一社、バイアコムもそんな例の一つ。パラマウント・ピクチャーズ経由で以前の持ち主だったガルフ+ウェスタンなんて名前も出てきますから、あまり話を広げすぎると一気に米国企業史のような事態に発展して、収拾がつかなくなってしまうという書き手泣かせの題材でもありますね。
さて、日本にいるのにどうして米メディア業界の話をしないといけないのか。それは、しばらくイノベーションが起こっていない分野であり、そして、消費者が置いてけぼりの業界だからです。
つまり、「業界構造が問題でイノベーションの余地がない」んですね。ここにアップルやグーグルは手を突っ込みたくて仕方がないのに、既存メディアは映像ビジネスでしっかり儲かってるもんですから「いやいや、あなた方の助けはいりませんから」という感じ。
テレビ業界を、単なるハードウェア=受像器としてのテレビではなく、コンテンツやサービスを含めた全体で見回すと、Disrupt=破壊には絶好の領域ですね。
(後略)
今回はCNET Japanに出張して、米テレビ市場でのコンテンツと配信をめぐるせめぎ合いを紹介したい。
先頃、ケーブルテレビ事業者最大手のComcastが完全買収することになったNBCUniversal(NBCU)について興味を引く記事を目にしたので、まずはこちらを紹介したい。
Wall Street Journalの3月10日付記事に、NBCU傘下の「ブロードキャスト」と「ケーブル」の売上と営業キャッシュフローを比較したグラフが掲載された。
2012年の売上とキャッシュフローは、ケーブル放送が87億7000万ドルと32億9000万ドルに対し、ブロードキャストは81億5000万ドルと3億6900万ドルで、売上は1割も違わないのに対し、キャッシュフローへの貢献度では10倍近い開きがある。
電波を使った従来の放送事業はかなり儲けが少ない——そのことがこのグラフをみると一目瞭然となる。
ドル箱となってきたケーブル放送も主力チャネルの視聴率が低迷。その結果、2012年のキャッシュフローが前年を下回り、全体としていよいよ大変になってきたという、そんな状況が記事のタイトルからも伝わってくる。
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