「無用なお飾り」がつき始めたスマートフォンの世界



GALAXY S4発表会はブロードウェイ・ミュージカル仕立て。しかし、そこで紹介された新機能は無用なお飾り、1950年代の車に付けられた無用な翼=テールフィンのごときものではなかったか

 『アントレプレナーの教科書』などの著書もあるSteve Blank氏が来日し、新規事業立ち上げがテーマのセミナーが開かれたようだ。

 このBlank氏のオフィシャルサイトに面白いエッセイが載っている。

 エッセイのタイトルは『いかにしてiPhoneにテールフィンが付くようになったか』(註1)。公開されたのは2011年10月なので、iPhone 4Sの発表とSteve Jobsの死から間もない頃だから、Jobs哀悼の文章とも言えそうだ。そして、スマートフォン市場を中心に、Appleを取り巻く状況が当時と今とで大きく異なっていることは改めて書くまでもない。

 エッセイは、20世紀前半から半ばにかけてGeneral Motors(GM)を世界一の企業に育て上げた経営者Alfred P. Sloan, Jr.とSteve Jobsとの共通点を挙げていく内容となっている。

 Blank氏によると、1年に1度のバージョンアップ(新モデル投入)も、スタイリングを重視したデザイナー主導の製品開発も、そして、ある目的を達成するための道具を誰もが所有していなくてはと思わせるようにニーズを変えたのも、すべてSloan氏指揮下のGMが1950年代頃までに自動車の分野で取り組んだことだそうだ(註2)。

 ただし、往時のGMでは徹底した消費者調査を行っていたというから、その点では「そんなものは無用」と言い切ったジョブズと180度異なる考えで動いていたともいえる。

 そして、このエッセイの中でとりわけハッとさせられたのは、次のような記述だった。

GMはマーケットのセグメント化と(複数ある各ブランドの)年に一度の新モデル投入を、全米が注目する一大イベントに変身させた。どんな新機能が搭載されそうか、メディア各社が推測情報を伝えるなか、GMは軍事機密さながらの厳重さで情報を隠したために、新モデルの神秘性がさらに高まった。消費者は新モデルが披露される日を指折り数えて待っていた。(註3)

1970年代に日本車が輸入されてくるまで、およそ50年にわたり米国人は自分の乗るクルマのブランドや年式を話題にしていた…(略)…一番良いのはどのブランドかをめぐって、人々は熱心に議論を戦わせていた。(註4)

自動車は20世紀の米国を象徴する存在になったと同時に、当時の人々にとっては自分のアイデンティティの一部となっていた。(註5)

20世紀における自動車と同じように、iPhoneはユーザーと感情的・本能的な部分でつながっており、またユーザーにとっては自分がどんな人間であるかを示す象徴ともなっている。(註6)

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