儲からない米テレビ放送ビジネス - (page 2)

 NBCの地上波放送がどうしてこれほど儲からないのか、その理由は現時点でよく分からない。

 「稼ぎもそこそこ多いが、制作等にかかるコストもかなり高い」という姿が数字から浮かんでくるが、コスト面については数年も続いているスポーツ放映権の高騰のようなはっきりした例がある一方、スポーツ以外のジャンルも含めた全体像については、これという情報を目にしていないからだ。なお、スポーツ放映権の高騰(メジャーのプロスポーツに加え、NCAAの一部競技も)とその影響については「スポーツ・タックス」という言葉も生まれているほどなので、また別途記すことにしたい。

 さて、NBCUを傘下に収めることで、Comcastは映像コンテンツの制作から配信までをすべて自前で行えるようになる。つまり、垂直統合を果たすのだ。

 そのComcastの売上と利益(EBITDA)の構成は下のグラフのような感じになっている。従来からのケーブルテレビ事業と映像コンテンツ事業が売上・利益ともに頭打ち、もしくは若干の減少であるのに対し、パイプの部分にあたるブロードバンドビジネスは売上・利益の両方で着実に成長していくと予想されている。

  • Comcastの売上予測(出典:TREFIS

  • ComcastのEBITDA予測(出典:TREFIS

 3月25日には、米4大テレビ局の視聴率が軒並み前年割れという内容の記事が、やはりWall Street Journalに掲載された

 昨年秋からはじまった今シーズンの視聴率(18〜49歳の視聴者層が調査対象、3月15日まで)が、CBS 3%減、NBC 7%減、ABC 8%減、Foxに至っては25%減という惨状。ただし、視聴率の浮き沈みは五輪やサッカーのワールドカップ、大統領選といった大イベントの有無や、各社の擁する人気番組の相対的な強さなどに影響されるので、あまり意識し過ぎても意味がないかもしれない。

 それよりも面白いのは中期的な流れだ。

 この記事に付随する図解には、ブロードキャストとケーブル(衛星経由を含む有料テレビ)の広告市場における「主従交代」の流れを示す棒グラフがある。

 2005年から2014年までの実績と予測を並べたこのグラフを見ると、2011年に逆転したケーブルとブロードキャストの広告売上は、その後も年を追うごとに差が開く一方であることがわかる。

 なお、5月に契約がほぼ決まる今年秋からの新シーズンについては、「ブロードキャストの広告売上が2〜2.5%減、それに対してケーブルの売上が5〜7%増の可能性も」という業界関係者の予想も紹介している。

 同記事には「総視聴者数が伸びたのはCBSだけ(2%増)」という記述も見られるが、これは2013年のスーパーボウル中継がCBSの順番だったことが関係しているのかもしれない。また、視聴率に「番組放映後にデジタルビデオレコーダーの録画を観る視聴者の数は含まれていない」とあるが、2月半ばにNielsen関係者が明らかにしたデータ収集対象の大幅な見直しがどう影響してくるかも注目されるところ。この見直しは今年秋から実施の見込みで、従来のケーブル、衛星、ブロードキャストに加え、iPadやPlayStation、Xboxなどでも視聴されるネット経由での配信——NetflixやAmazon.comといったOTA(Over The Air)サービスからの映像コンテンツも新たに対象に追加されることになるという。

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