ここで話題はeスポーツに関する現状に移り、筧氏が説明した。「スポーツ」という言葉を聞くと、日本では運動主体、つまり体を動かすことをイメージしている人が多いが、本来の意味としては思考力や計算力などを競う競技も含まれ、頭脳主体のマインドスポーツも存在する。そしてeスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、世界では賞金がかけられた大会やプロリーグもある。年収1億円を超えるプレイヤーが登場するなど、2000年代を通じて広く普及していった。
リアルタイムストラテジー(RTS)で人気のある「LEAGUE OF LEGEND」の大会の一つは賞金総額6億円という規模、サッカーゲーム「FIFA13」ではFIFA主催の公式世界大会が行われ、優勝プレイヤーがバロンドール授賞式に招待されるとともに、メッシ選手などのスタープレイヤーとともにFIFA会長から表彰されるという。だが、日本ではまだそこまで普及が進んでない。ある超大物プレイヤーが来日したときに「世界を転戦していて、ファンが空港に来なかったのは日本とアフリカだけ」と言われたエピソードも明かした。
世界ではプレイヤーの地位も高く確立されているが、この舞台に日本人が出て行って活躍してほしいというのが筧氏の願いでもある。取り組みも徐々に実を結び始めテレビなどでも取り上げられる機会も増えてきており、2013年はeスポーツ専門紙の創刊や東京ゲームショウで世界大会の開催など、さらなる盛り上がりが期待できるという。
筧氏はあるゲームプレイヤーの話として、小学生のときにゲームがうまい子はヒーローになれるのに、中学生以上になるとオタクと呼ばれると聞き、その風潮に疑問を感じているようだ。「例えばサッカーを頑張っているとJリーグ目指してなどと応援されますけど、ゲームを頑張ってると引きこもりだとかオタクだと後ろ指をさされます。さらに頑張って世界大会に出場できるくらい上達しても、こんなことやってて大丈夫かと心配されるのが日本の現状です。でもそれは違うのではないか」(筧氏)
韓国では10年ぐらい前から国策でインターネット産業を支援してきたこともあってか、現在では子供のなりたい職業の2位にeスポーツ選手が挙がるほど、あこがれの職業になっている。世界のような地位が日本でも理解され確立されるのであれば、その風潮は変わると筧氏も期待もしているようだ。
平井氏が、かつての高橋名人のような憧れの存在がいないことを指摘。黒川氏も同調し、少し前に出ていたクリエイターの名前が出てこなくなり、むしろゲームタイトルが先に来る現状であると見解を示した。筧氏もゲームに限らずどの業界でもスターがいることによって牽引され活性化するのは間違いなく、日本でも対戦格闘ゲームの有名プレイヤーであるウメハラ(梅原大吾氏)をはじめとして、プロゲーマーとして活躍する人物も現れ始めているが、eスポーツで憧れられる存在が、普及活動を通してさらに登場してきてほしいとしている。
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