ジンガ国内撤退やeスポーツの現状をキーマンが語った--黒川塾(七)

 3月15日、サイバーエージェント・ベンチャーズにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(七)」と題したトークセッションが行われた。コラムニストの黒川文雄氏が主宰、エンタテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。

黒川文雄氏
黒川文雄氏

 今回は「僕らのゲーム業界ってなんだ……!?」と題し、ゲストそれぞれの立場から変化の激しいゲーム業界について語られた。登壇したのは、2012年12月に日本ゲームユーザー協会(JGUA)を設立した漫才コンビ「アメリカザリガニ」の平井善之氏、コーエーテクモホールンディングスの代表取締役社長やジンガジャパンの代表取締役CEOを務めた松原健二氏、日本eスポーツエージェンシーの代表取締役である筧誠一郎氏、ゲームのチューニングを行う猿楽庁の長官である橋本徹氏の4人。

パッケージゲームの行く末はいかに

平井善之氏
平井善之氏

 最初の話題は平井氏が立ち上げたJGUAと、パッケージソフトの今後について。JGUAは「ゲームが売れない」という業界内外での声を聞き、ゲーム業界を盛り上げるために何かをすべきと平井氏が思い、立ち上げられたものだ。「ゲーム盛り上げクラブでもゲーム大好き隊でも良かったんですけど、協会という響きが良かったので付けたんです」(平井氏)。もっとも、“協会”とつけてしまったがために、その言葉の重さから「ユーザーの代表ではない」や「中抜き団体なのか」など、平井氏のもとにはさまざまな批判が届いたという。実際には自主活動的でまだまだこれからという側面があるものの、今後は動画配信などで盛り上げていきたいとしている。

 「ゲームが売れない」というのは昨今よく聞く言葉ではあるが、これに異を唱えたのが松原氏。ソーシャルゲームの隆盛や「パズル&ドラゴンズ」の大ヒットを例に上げ「仮にガンボー・オンラインエインターテイメントの1月の売り上げが全て『パズドラ』だとしたら、その利益を出すにはPS3ソフトの250万本から300万本を売ることになるし、それを毎月売り上げているんです」という見解を示した。そして全体的に裾野は広がりゲームは売れているのではと松原氏は指摘する。

 「昔、自転車の前かごにおもちゃ屋さんで買ったゲームソフトを入れて、すごいスピードで家に帰ったじゃないですか。物理的にある物を持ち帰るロマンティックを忘れたくないんです」と語る平井氏。パッケージゲームとして物があることも大事だが、それ以上に、かつてゲーム機を囲んで場を共有し、みんなでわいわいと遊ぶ感覚、それを通したコミュニケーションは健全なことであり、それを肯定したいという気持ちが強いようだ。

 ゲームを通じたコミュニケーションについて、筧氏はオンライン環境の整備によって変化したと語る。「今まで家庭用ゲーム機があって、そこでみんなで遊んでいたものが、オンラインによって外に飛び出していったと思います。日本のプレイヤーが海外のプレイヤーと、ゲームという共通言語によって交流が深まっていくという、新しい交流の場ができて広がっているものだと思います」(筧氏)。また平井氏もこの意見を聞き「パッケージゲーム協会」とはつけてないことから、柔軟にゲームについて盛り上げていきたいとした。

橋本徹氏
橋本徹氏

 もっともゲームのパッケージ販売の今後については、徐々に減っていく方向にあることは、ほぼ一致した見解となった。松原氏は「家庭用ゲームがなくなることは無いが、ダウンロードして遊ぶのはユーザーにとって便利だし、経営者の立場でいくと在庫リスクがないので、無くなっていく方向にあると思ってます」と語り、橋本氏も物は持っておきたいタイプではありつつも、3DSのカートリッジ入れ替えの手間を感じ葛藤している気持ちを示した。黒川氏もPS4の展開にあたり、ソニー・コンピュータエンタテインメントがGaikaiを買収し、ダウンロードで遊ばせようとする意図が見え隠れする事情にも触れていた。筧氏はゲームがコミュニケーションとして成立していれば文化として継続していけるので、メディアやハードにこだわる必要はないという意見を述べていた。

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