Apple四半期決算発表から見る、2013年のモバイル業界動向--松村太郎のApple一気読み

 1月21日~1月27日のAppleに関連するCNET Japan/ZDNet Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。

 今週筆者は久しぶりに東京で過ごしたが、通信環境などの変化を毎回感じられるのが面白い。今回は、帰ってきてみると地下鉄のトンネルの中でちゃんと3G通信ができるようになっており、メール改めLINEや2ちゃんねるまとめリーダを読む人たちも快適そうだった。また東京のような都市で細かく移動しながら通信をし続ける使い方をしている人たちにとって、バッテリがネックだが、モバイルバッテリをよく見かける点も、米国とは違う風景だ。

 日本では売上に占めるiPhoneのシェアが6割を超える地域といわれるが、それでもAndroidスマートフォンやタブレットも非常に良く目にし、日本の環境で新たな「スマホ文化」の誕生に期待感を隠せない。

 それでは、先週のニュースを振り返っていこう。

Apple決算発表。増収増益でも期待外れ?

 Appleが米国時間2013年1月23日に発表した第1四半期(2012年10-12月期)は非常に好調であったが、アナリストなどの期待には届かない結果となった。発表した週の金曜日、Appleの株価の終値は439.88ドルと急落している。

 決算の中で注目すべき数字は以下の通り。

  • 売上高545億ドル
  • 利益131億ドル
  • 1株あたりの利益は13.81ドル
  • iPhoneの販売は4780万台
  • iPadの販売は2290万台
  • Macは410万台
  • iPodは1270万台

 これだけ見ると、めざましい数字だったが、アナリストの予想に比べて、1株あたりの利益以外はわずかに下回る数字となっている。これに加えて、1月中旬から下旬にかけて、iPhone向けの部品発注点数の削減に関する報道があり、Appleの業績の先行きへの不安から株価が下落する場となっている。

 消費者の視点からすると、iPhoneも、最新のiPad miniも、11月末のホリデーシーズン、クリスマスにかけて、品薄の状態が続いており、特にiPadに関しては若干の「機会損失」による伸び悩みがあったのではないか、と見受けられる。

 一方で、かねてより本連載で指摘してきた、中国市場へのトランジションについては、一定の成果を上げている。中国本土・台湾・香港においては、前年同期比で60%増の73億ドルの売上を記録した。iPhoneについては中国最大のChina Mobileの3G回線に未対応の現状でも3桁パーセントの増加を記録している。

 iPadのラインアップに関しては、iPad miniによってタブレットのダウンサイジングを、MacからiPadへのメインのコンピュータのダウンサイジングのトレンドを方向付けている。一方、iPhoneについては、4インチに拡大したものの、端末サイズやアプリとの整合性を維持するため、思い切った変更ではなかった。

 次のトピックにも登場するが先進国市場向けには、他社が5インチクラスに大型化している中で、現状のiPhone 5に対して製品の競争力に対して不安視する声が聴かる。その裏返しとして画面サイズ拡大をしたiPhoneへの期待が寄せられていることになる。

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次のiPhone、iPadについての期待

 iPhoneの画面サイズは3.5インチで登場し、これがRetina化、そしてiPhone 5で縦方向に伸びて4インチになるという系譜を辿っている。一方で、世界で最もスマートフォンを売り上げているメーカーのSamsungは、5インチ前後のサイズを展開し、支持されている。確かにGalaxy S IIIに触れてからiPhone 5に戻ると、画面の迫力やコンテンツ閲覧等で見劣りすると言わざるを得ない。

 Appleがアプリのエコシステムを緩やかに大画面に移行させようとしている点、そしてデバイスとしての使用感を維持しておきたいという点は、開発者への負担やユーザーの体験の面で評価できるが、一方でiPhoneにとってのネガティブな側面を作り出すことになっている。

 Android、Samsungに販売面等で押され気味のAppleにとって、画面サイズと価格という競争力が弱い点をどのようにテコ入れするのかに注目が集まるのは、自然な流れと言える。価格についてはブランド維持の面で筆者はそこまで問題ではないように感じるが、画面サイズについては何らかの答えを出さなければならなくなるかも知れない。

 そうした現状から、6月に毎年行われているWWDCに向けて、4.8インチのiPhoneが登場するのではないか、という噂が先週の記事で流れている。開発者向けイベントであるWWDCで発表するのは、アプリのエコシステムを大切にするなら適当なタイミングと言うことができる。

 また、iPad 5やその他の製品のアップデートについても噂が上がっている。Appleは各製品ラインを年次更新することは既定路線となっているため、さほど驚かないが、では2013年のいつなのか、という点は注目だ。ちなみにRetinaディスプレイ化とLTE対応を果たした第3世代iPadは2012年3月に登場している。2012年11月にDockからLightningポートに変更されたが、大きなiPadは3月の更新が適当かもしれない。

 全く別の視点だが、これまでコンピュータはプロセッサやメモリと言った処理そのものに関わる部分が進化の中心だったように思う。ところが、Appleのデバイスに限らず、昨今の製品の評価軸は、画面の解像度やそのサイズに集中している。“人”がデバイスを「つかんで」「触って」操作するようになったことで、進化の中心がディスプレイになったという点は、一つ意識しておくと良さそうだ。

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