「世界一を目指そう」--12.8mmの薄型ウルトラブック「LaVie X」が生まれた背景 - (page 3)

――キーボードは10キーも搭載されています。

 10キーがなければもっと効率のいいバッテリの配置とか容量の大きなバッテリが使えるといったメリットもあるので、本当に10キーが必要なのかという議論も実は最初の時点ではありました。

本当に10キーが必要なのか、という議論もあったという
本当に10キーが必要なのか、という議論もあったという

 弊社の15.6インチのPCの全機種と、13インチのLaVie Mで10キーを搭載しています。Windowsユーザーに対しては10キーの有無というのはかなり響く部分なのです。それなのにこれだけスペースがあるのに採用しないというのも不自然です。しかし、そうするとデザイン的には左右対称でなくなってしまうので、Ultrabookとしては今度はバッテリの搭載部分で難点になります。

 10キーが入ることで、クリックパッドの位置が左側に寄ってしまったために、バッテリのサイズや入る場所というのが自動的に決まってしまいます。その中でいかにバッテリ時間を延ばすかというのは薄さを追求する以上に苦労した部分です。バッテリのセルの構成だとか、例えばファンが回っていないときはスリープではなくて完全に電源から落としているとか、そういった細かい節電の工夫をかなり積み重ねています。

手前のタッチパッドを挟んで両側の黒い部分がバッテリ
手前のタッチパッドを挟んで両側の黒い部分がバッテリ

――他にこだわった部分は?

ベゼルと液晶面にわずかな段差があるのがわかる
ベゼルと液晶面にわずかな段差があるのがわかる

 ベゼルと液晶面に段差があるのですが、キーボードのトップがこの段よりも少し上に上がっているんです。これがちょうど液晶の段差のすき間部分に収まるので、薄さの実現に貢献しています。このわずかな凹みがなければキートップが当たってしまうんです。それから、基板のCPUの部分には裏に留め金があるので他のところよりも飛び出てしまうのですが、その部分を成型の後に薄く削ることで本体にはまるようになっています。あとはファンを2つ使うことでヒートパイプで熱が左右に分散するので、ふつうの設計よりも全体的にクリアランスを低くしても十分排熱をできるようにするなど、表面温度が上がり過ぎない工夫をしています。

基板のCPUの部分。薄く削ることで本体にはまる構造
基板のCPUの部分。薄く削ることで本体にはまる構造

――今回のXもそうですが、最近のNEC PCは世界最薄、世界最軽量など、“世界一”を謳えるPCに力をいれていると感じます。その背景には、何があったのでしょうか。

 社内の雰囲気として一番大きかったのは、やはりレノボとのシナジーを活かして何かをやろう、というときに「ナンバーワン」というのがスタート時にまずあったことですね。

 その際、どんなことをやったらインパクトを与えられるか──といった議論を重ねました。その結果、NECというのはやはり市場シェア1位を堅持しているメーカーですので、やはりいわゆる売れ筋の部分を押さえなければならないとすると、Blu-ray Discドライブが付いたり高性能なスピーカーが付いたりと重量級のパソコンを作ってそれをお客様に買っていただくというサイクルになってしまうんです。

 経営的にもそれで余裕がない状態が長年続いていたのですが、レノボとのシナジー効果で少しできた余力を値引きに還元するのではなく、モノ作りに回そうとなりました。そこでふだん手つかずになっているけれど、弊社で潜在的に高い能力があると自覚している分野で何かやろうということになり、こうしたコンセプトが生まれました。

――これまでのNECのイメージからすると、こういった世界最薄・最軽量を目指すモノ作りというのは新しい印象を受けます。

法人向けPCの「UltraLite」シリーズ
法人向けPCの「UltraLite」シリーズ

 確かに一般のお客様からすると、NECは初級者・中級者向けのPCを出しているという印象が強いかと思いますが、弊社としてはこれまでも企業向けノートPCとして軽量の「UltraLite」などもずっと手掛けてきました。そうした開発の中で薄い・軽いというノウハウは培ってきましたので、突然今回のような商品を発売したというよりも、今までの流れの中から生まれたものだと思っています。

――自然な流れとして今回のような世の中にインパクトを与える新製品が登場したということですが、開発にあたり、社内的な意気込みや気運という点でこれまでとは異なる部分はありましたか?

 これまでは企画担当者のほうが「こんな薄いのを作りたい」などと言うと、責任者から「寝ぼけたことを言っているんじゃない」と否定されることが多かったのですが、今回は会社の上層部のほうから「世界一を目指そう」と方向性が示されたところが大きいです。

 一方で、NECとしての品質基準というのもあります。基準というのはさまざまなテストにクリアできるために設けられたものなのですが、今回はその基準よりもとにかくまずは作ってみよう、という感じでした。それで作ってみてテストをクリアできればOKだし、できなければクリアできるように改良をしていくという、いつもとは違ったスタンスの後押しがあった上で開発が進みました。

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