2012年の通信業界を振り返ると、市況全体の動きとしては 固定系(加入電話・ISDN)は3595万契約で対前年比9.1%減少。移動系(携帯電話・PHS)は1億3276万契約で対前年比7.7%増加となった。ここ数年続く固定系は減少、移動系は増加という流れに変化は無かった。
PHSのみウィルコムの「だれとでも定額」や「もう1台無料キャンペーン」が好調で対前年比21.4%増加の456万契約と健闘したことを除いては、増加するトラフィック、減少傾向の固定網、増加傾向の移動体という大きなトレンドに変化は無かった。
しかし、各通信キャリアの戦略という面では2012年は今後を占う上で大きな転換点となる年だったと言える。ソフトバンクモバイルは海外へ目を向け、NTTドコモはデジタルエコノミーの覇者を目指してコンテンツ事業の拡大、KDDIは固定・移動を融合する3M戦略を軸に顧客志向を強化する。
一時はスマートフォンによる土管化で差別化が難しくなるとされたキャリアビジネスだが、三社ともに異なる軸へと戦略の舵を切った。
今後の方向性を決める重要な年となった2012年だった。ここで、私が印象に残った10個のトピックを挙げたい。
年始早々総務省からドコモに対して通信障害に関する行政指導が行われるという異例の事態が起きた。ドコモの回線品質は業界内でも優れていると考えられており、「あのドコモ」でさえ、昨年同様トラフィック急増への対応に追われるスタートとなり、スマートフォンがもたらすトラフィックトレンドの変化がいかにすさまじいかを印象づけた。
通称「プラチナバンド」と呼ばれた900Mhz帯をソフトバンクモバイルが獲得。その後700Mhz帯をドコモ、KDDI、イー・アクセスが獲得したが、ソフトバンクモバイルがイー・アクセスの買収を発表。結果としてソフトバンクモバイルは900Mhzと700Mhzの二つのバンドを手に入れ、ドコモ、KDDIと並ぶ周波数を確保した。
トラフィックの急増でWi-Fiによるデータオフロードの促進が重要になった。今後もWi-Fiと3G/LTEをシームレスに切り替えユーザーにストレス無く最適な通信を提供するソリューションの競争が行われるだろう。
官主導で通信と放送の融合が提唱されかなりの時間が経過したが、権利問題などの関係から融合は思うように進んでいなかったが、スマートデバイスの普及により「民」主導の通信と放送の融合元年となった。
ドコモがNOTTVを開局し、KDDIがCATV大手JCOMを買収、ソフトバンクもSoftbank SmartTVを開始し、通信キャリアの映像・放送事業の開始が目立った。放送業界も日本テレビJointTVを筆頭にセカンドスクリーンを活用した新しい放送への取組が始まった。
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