ゲーム開発にKPIやマネタイズは禁句--「パズドラ」を生んだガンホーの開発姿勢

 10月12日、サイバーエージェント・ベンチャーズにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(参)」と題したトークセッションが行われた。

 エンタメ系コラム執筆などの活動を行っている黒川文雄氏が主催・コメンテーターとして、エンタテインメントの原点を見つめなおし、未来についてポジティブに考える会となっている。6月に行われた第1回では、日本科学未来館にて常設展示が行われている「アナグラのうた 消えた博士と残された装置~」を、8月に行われた第2回では、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)創業メンバーによる、プレイステーションの誕生秘話をテーマにした。

 第3回目となった今回は「Gungho(突撃)NIGHT」と題し、ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長の森下一喜氏、大ヒットとなっているスマートフォン向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)のプロデューサーである山本大介氏を迎え、パズドラを生み出した同社の開発姿勢などが語られた。また、スクウェア(現スクウェア・エニックス)の創業メンバーの一人であり、退職後はフリーの立場ながら顧問としてガンホーに関わっている田中弘道氏も登壇。さらにゲームクリエイターの飯田和敏氏も聞き手として加わり進行した。

デススパイラルの危機に開発体制を社長直下へ変更

森下一喜氏
森下一喜氏

 近年ではパズドラのほか、累計200万ダウンロードを果たしたスマートフォン向けゲーム「ケリ姫クエスト」、販売本数が10万本を突破したPS Vita向け「ラグナロク オデッセイ」などヒットタイトルを出している同社だが、多くの人がイメージするゲームといえば、やはりPCオンラインゲーム「ラグナロクオンライン」であろう。日本では2002年12月1日に正式サービスを開始し、未だに運営が続いている。同社はラグナロクオンラインの日本導入で急成長を遂げた。

 人数が増え会社の規模が大きくなるにつれ、森下氏は現場から離れ、上場企業の社長業に専念していくが、「デススパイラル」に陥ってしまったという。このあたりは、小さな企業が規模を大きくしていくなかで同様の問題が見られると思うのだが、コスト管理や予算、開発やプロモーションの期間や事業計画、そしてなにより上場企業として売り上げを向上させる使命に、会社の雰囲気として現場が縛られていき、自社のタイトルに駄作と感じられるものが目立つようになったという。

「ゲームをプレゼンされても面白く感じなくて…。現場に任せた以上は、あまり口出しするのもどうかと思って静観していたんです。でも、やっぱりつまんなかったし、そのころは会社辞めてやろうかと。こんなことのためにゲーム会社を作ったわけではないと、くすぶっていた時期がありました」(森下氏)。あくまで冗談交じりな口調で当時を振り返っていたが、これだけのことがあったせいか、あるとき森下氏は「自分の作りたいものを作る。もっとわがままにやる」と決意し、開発体制を変更。社長直下に置いて、自らクリエイティブチェックや監修、リリースするまでの責任を持つ形にした。

 今ではブラッシュアップのためにリリースを1~2カ月遅らせることもあるという。「それもこれも、膠着したものをぶち壊すため。そして完成度を高くいいものに仕上げるため。もちろん自分で全て責任を持ってやっているから」(森下氏)。こうした開発体制の変更から生まれたのが、パズドラをはじめとした、前述のタイトルとなっている。

 ちなみに山本氏や田中氏に関しては、森下氏が人事を通さず面接を行って採用を決定。理由は、こだわりと完成度の高いものを仕上げていくなかで、思想哲学に共感してもらえる人に来てもらうためだとした。

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