「世界3位の携帯電話事業者が誕生した」――ソフトバンクは10月15日、米携帯電話事業者であるSprint Nextelを買収したことを発表した。Sprint Nextelの株式の70%を取得し、買収総額は1兆5709億円(約201億米ドル)におよぶ。
投資総額のうち約9469億円(121億米ドル)はSprintの株主に支払われ、約6240億円(80億米ドル)はSprintの財務体質の強化などに投じられる。両社は、2013年半ばに取引を最終的に完了すると見込んでいる。
同日都内で開かれた記者会見で登壇したソフトバンクグループ代表の孫正義氏は、Sprintへの投資について、多くの消費者や株主が抱えているであろう疑問として(1)「この投資は成功するのか?」、(2)「借入金の返済は可能か?」の2点を挙げ、いずれについても「自信があります」(同)と力強く答えた。
まず「この投資は成功するのか?」という疑問については、落ち込んでいたSprintの業績が2012年度に入り回復傾向にあることに加え、ソフトバンクの「資金」「戦略」を導入することでさらなる競争力の強化が見込めると説明する。
「資金」については、ソフトバンクによる6240億円の増資金で、Sprintのネットワーク強化、戦略的投資、財務体質の強化を図る。また「戦略」については、ソフトバンクのスマートフォン戦略やLTE戦略、V字回復のノウハウなどを「徹底的にSprintにも植え付けていきたい」(孫氏)という。
孫氏が特に強調したのがV字回復のノウハウだ。同社は2004年に赤字体質の日本テレコムを、2006年に赤字転落寸前のボーダフォンジャパンを、2010年に経営破綻したウィルコムを買収し、いずれも黒字へと転換させた経験を持つ。
孫氏は「この3社は赤字3兄弟という状況だった。社員もユーザーも自信をなくしているという状況から、我々ソフトバンクの傘下に入った瞬間から3社ともV字回復した。3度あることは4度あるということではないか」と胸を張る。
また、ソフトバンクのモバイル事業のEBITDA(償却前営業利益)は、米国のAT&TやVerizon Wirelessに匹敵していると強調し、「ソフトバンクとのシナジー効果でSprintの利益率は大きく上昇する。我々は一番いいところでSprintの買収を決めた」と語った。
さらに、Sprintを子会社化することで、ソフトバンクのネットワーク機器の購入台数は世界で最大規模になるとも語る。これにより、ネットワーク機器メーカーはもちろん、端末メーカーに対する交渉力や調達力もはるかに向上するとした。
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