「Google Wallet」は誕生から1年を迎えようとしている。しかし、スマートフォンを財布に変え、消費者が決済を行う方法に革命をもたらすと考えられた同アプリケーションは、軌道に乗りきれずにいる。
なぜだろうか。理由は、Googleが間違った技術に賭けてしまったからかもしれない。近距離無線通信(NFC)だ。
1年前、Googleの幹部たちはパートナーであるMasterCardやCitibank、Sprintとともにニューヨーク市で壇上に立ち、決済の未来を発表した。大量のカードやレシートを財布に詰め込む必要はもはやない。Googleの計画は、すべてを仮想化することだった。
Googleは「Android」スマートフォン向けのアプリケーションを通して、消費者がジョージ・コスタンザ(米コメディドラマ「となりのサインフェルド」の登場人物)の持っているような分厚い財布を家に残し、すべてのクレジットカードやポイントカード、ギフトカード、そして将来的には運転免許証までを、いわゆるデジタルウォレットに入れ込むことのできる世界を約束した。こうした重要情報のすべてはスマートフォンに保存される。
NFCという非常に近距離でセキュアな無線技術を利用して、消費者はクレジットカードやクーポン、ポイントカードの情報を読み取る端末に自分のスマートフォンをかざすだけで、決済を行うことができる。
だが、Googleがこの新しいアプリケーションを披露してからもう1年が経過する。同社は、新しい小売パートナーとの提携という点では少し前進したが、新たなクレジットカード、銀行、および通信キャリアパートナーとの提携は進んでいない。
Google Walletが機能するクレジットカードと銀行の組み合わせはいまだに1組に限られ、Citibank MasterCardのみだ。そして、Google Wallet携帯電話を提供している大手の通信キャリアはSprint Nextelだけだ(Sprintのプリペイドブランドの1つであるVirgin Mobileも、近日中にGoogle Walletデバイスを提供する予定だ)。
潜在的なGoogle Walletユーザーにとってこれは、自分の「デジタルウォレット」に追加できるクレジットカードはCitibank MasterCardに限られることを意味する。Citibank MasterCardを持っていなくてもデジタルウォレットを利用できるが、Googleのプリペイドカードに入金しておく必要がある。そして、Google Walletをサポートする唯一の通信キャリアがSprintであるため、ユーザーはSprint(またはVirgin Mobile)の加入者にならなければ同アプリを使えない。唯一の例外は、AT&TのようなGSM通信キャリアで使用可能な「Nexus S」のロック解除版を購入した場合だ。
それでは、何が間違っていたのだろうか。同サービスの普及が伸び悩む理由の1つは、NFCの「tap-to-pay」(タップによる送金)技術に依存していることかもしれない。その技術自体はしばらく前から使われており、問題なく機能するが、それを決済に利用する上で難しいのは、広範なエコシステムで実現させることが必要になるという点だ。
第一に、ハードウェアの問題がある。非常に小さなNFCチップをデバイスに搭載しなければならない。そして、POS端末にも、デバイスに搭載されたNFCチップから情報を読み取る機能を追加する必要がある。
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