2つめの大きな問題は、デバイスに埋め込まれたNFC技術を通して顧客を管理するのは誰かをめぐって、いまだにビジネス上の争点が存在することだ。
イスラエルに拠点を置くDigimoというモバイル決済新興企業の創設者兼最高経営責任者(CEO)であるYossi Yarkoni氏は、「NFCによる決済をめぐる最大の問題は政治的なものだ。問題の本質は、『顧客を所有するのは誰か』にある」と述べた。
Digimoは、NFCではなくQRスキャン技術を使用するモバイル決済システムを開発した。Yarkoni氏によると、Google WalletのようなNFCベースのモバイル決済の発展を阻んできたのは、誰がセキュアエレメントを所有するのか、という根本的な問題だという。
「そうした顧客関係を他者に引き渡さなければならないのだとしたら、どうしてAppleやサムスンがNFCをデバイスに搭載するだろうか。その分け前はエコシステム内の誰もがほしがるものだ」(Yarkoni氏)
その結果、現在米国で販売されている携帯電話のうち、NFCチップが埋め込まれているものの割合は1%にも満たないという事態になってしまった。しかしGoogleは、デバイスの面では前進していると話す。
Google Walletの提供が開始されたとき、同アプリを利用できるデバイスは、サムスンが製造したGoogleブランドの「Galaxy Nexus S」だけだった。現在、NFCとGoogle Walletアプリをサポートするデバイスは計6機種になった。これらのデバイスのうち、5機種はつい最近発表されたばかりだ。
そのリストを簡単に紹介する。
しかし、Google WalletやそのほかのNFCベースのモバイル決済ソリューションを成功に導くにはもっと多くのデバイスが必要だ、と専門家は言う。PayPalのような企業が、NFCやそのほかの特別なハードウェアを必要としないソリューションを開発していることを考えると特にそう言えるという。
NPD Groupで決済に関する調査を担当するアナリストのLinda Barrabee氏は、「NFCベースのモバイルウォレット事業は、ハードウェアの不足のために短期的には不利な立場に置かれるだろう。これによって、PayPalなどの企業は競合他社に差をつけることができるかもしれない」と述べた。
PayPalは2011年にNFC決済を試験していたが、その技術には見切りをつけ、独自のインストアモバイル決済ソリューションを採用した。同社がNFCの代わりに採用したモバイル決済アプリでは、ユーザーに求められるのはPINを入力して自分のPayPalアカウントにアクセスすることだけだ。現時点で、同社は米国内の2000店以上のHome Depotで同サービスを展開している。そして、同社は米国時間5月24日、さらに15の小売店を追加すると発表した。
新しい小売店には、Abercrombie & FitchやAdvance Auto Parts、Aeropostale、American Eagle Outfitters、Barnes & Noble、Foot Locker、Guitar Center、Jamba Juice、J.C. Penney、Jos. A. Bank Clothiers、Nine West、Office Depot、Rooms To Go、Tiger Direct、Toys "R" Usが含まれる。
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