欧州当局はかつて、ブラウザをめぐるMicrosoftの対応を厳しく取り締まったことがあるが、現在はMicrosoftが提供を予定している新たなバージョンのOS「Windows RT」を注視している。ただし、この問題について異論があるかどうかはまだ明言していない。
Mozillaは米国時間5月9日、ARMプロセッサ向けの新版OSであるWindows RT対応のブラウザについて、競争力を持つ対抗製品を構築するために必要とされる権限を「Internet Explorer」(IE)以外のブラウザに与えないとするMicrosoftの選択を批判した。具体的には、IEはより深いレベルのWin32インターフェースにアクセスできるが、「Firefox」や他のブラウザ、さらにはすべてのサードパーティー製ソフトウェアは、制限が強化された新たなWinRTインターフェースにしかアクセスできない。GoogleもMozillaと同様、Windows RTにおけるブラウザの制約について懸念を表明している。
欧州委員会の競争政策部門で広報を担当するAntoine Colombani氏は声明で次のように述べた。
当委員会はこれらの指摘を認識しており、当委員会が2009年に定めたブラウザに関する決定に従い、Microsoftが自らの約束を完全に順守するよう引き続き監視していく。この決定は、MicrosoftのPC向けの「Windows」OSに適用される。
ここで言う2009年の決定とは、Windowsの独占に関する欧州委員会とMicrosoftの和解を指しており、Microsoftに対し、IE以外のブラウザを利用できる選択肢を提供するよう義務づけるものだった。
だが、欧州委員会の規定する「PC」が具体的に何を意味するのかは不明だ。この単語は業界でも定義が非常にあいまいな言葉でもある。Colombani氏はこの件に関するコメントを拒否した。
一方の米国では、Windows RTと従来版のWindowsの違いを考えると、Mozillaが独占禁止法違反訴訟を起こすことは難しいだろうとの見解を示す法律の専門家もいる。特にWindows RTはタブレット端末に比重を置いた仕様となっているからだ。ただし「Office 15」を搭載可能にしていることを考えると、Microsoftはタブレット端末をパーソナルコンピュータとしても想定していると思われる。1990年代に米国で繰り広げられたMicrosoftに対する独禁法違反訴訟は、x86プロセッサを搭載したPC向けのOSをめぐる競争が争点だった(当時、「Mac」は「PowerPC」プロセッサを搭載していたが、現在はIntelのx86プロセッサを採用している)。
Windows RT搭載機器がパーソナルコンピューティング機器であることを根拠に、これもPCだとみなされれば、欧州委員会はMicrosoftに変更を迫る可能性がある。PCという言葉がより狭い定義(例えばx86プロセッサ搭載マシン、あるいは物理的なキーボードとマウスを使用する従来型のノートPCやデスクトップPC)で使われている場合、Microsoftは窮地を逃れられるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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