しかし、この件の経緯に関するHolder氏の主張にも、出版社が具体的な価格で合意に達したという非難は含まれていない。出版社が何か合意に達したことがあるとすれば、それはビジネスモデルについてだった。すなわち、Appleの「iBookstore」が提供するいわゆる「エージェンシーモデル」の方がAmazon.comの卸売モデルよりもいいという判断だ。
1970年代以来、米最高裁判所が出してきた一連の判例は、Appleと出版社の双方にとって有利なもので、米司法省はおそらくそれを撤回したいと考えているだろう。最高裁は1979年のBMI対CBSの訴訟で、「実際の、または潜在的な競合他社同士で結ばれた価格に影響を及ぼすすべての取り決めが、本質的に法律違反に当たるわけではない」という判決を下した。また、2007年の訴訟では、メーカーは最低小売価格を強要することができる、という見解を示している。これは、出版社が電子書籍への取り組みをめぐって非難されていることの1つだ。
News Corp.傘下のHarperCollins PublishersとLagardere SCA傘下のHachette Book Group、およびSimon & Schuster(米CNETを運営するCBSが所有)は、今回の訴訟を和解によって解決することに合意している。AppleはPearson傘下のPenguin Group、Verlagsgruppe Georg von Holtzbrinck傘下のMacmillan Publishersとともに、法廷で争うことを選んだ。
Appleに対する政府の追及を特異なものにしているのは、同社が電子書籍市場において圧倒的なシェアを占めているわけではないことだ。その独占的な地位にいるのはAmazon.comである。
Amazonは依然として世界最大の電子書籍小売業者で、2010年の時点で90%ものシェアを誇った。書籍出版社はその市場支配力に警戒心を抱き、新しい「iPad」での電子書籍販売について、当時のAppleのCEO、Steve Jobs氏と契約を締結した。それは同氏が1月に新しいiPadを発表するほんの数日前のことだった。
独占禁止法に関する講義を担当しているManne氏は、「現在勢力を持っている企業に対抗する新たな競争相手が強化されることが、消費者にとってひどく悪い結果になるとは思えない」と話す。全米家電協会(CEA)は2012年4月11日、報道陣に送付した声明で、「われわれの曖昧な独占禁止法が、市場に参入してわずか2年強の新参企業に適用されようとしている。あたかもその企業に価格を設定するほどの市場支配力があるかのようだ」と付け加えた。
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