米連邦議会で審議中の「Jumpstart Our Business Startups Act」(JOBS法)は、すでに下院を通過しており、シリコンバレーで強い影響力を持つ人々の大部分にも支持されている。同法案によってシリコンバレーでのビジネスの方法が変わるのは確かだろう。しかしそれは、多くの人々が考えるような理由によるものではない。
JOBS法は、下院において複数の法案が「H.R. 3606」という1つの法案としてまとめられたものだ。上院では、H.R. 3606に含まれる法案のいくつかについて別の修正案が検討されている(編集部注:こちらは英文オリジナル記事が執筆された米国時間3月19日の情報。上院でも米国時間3月22日、JOBS法が可決されている)。
ここでは、同法案の主要条項を紹介し、それらがシリコンバレーに与える影響を考察する(編集部注:ここに記載される同法案の内容は、英文オリジナル記事執筆時の米国時間3月19日のものである。その後上院でも米国時間3月22日、JOBS法が可決されている)。
JOBS法の中で最も注目すべき点は、新興企業が小口投資家から資金を調達する機会が広がることだ。米国法では現在、私募に対して投資できるのは「適格投資家」のみとされている。米国の適格投資家は、主たる住居以外に、少なくとも100万ドルの純資産を所有していなければならない(そうした投資家は、新興企業への投資家の1%に相当する)。
JOBS法では、だれでも年間1万ドルまで、あるいは年収が10万ドル未満の場合は純所得の10%まで、株式を公開していない企業への投資が行える。つまり、すべての人が新興企業の資金調達にある程度参加できるということだ。これによって、中小企業への投資や雇用が増加する可能性があり、この点はJOBS法の主なセールスポイントとなっている。
このクラウドファンディング条項は、米国全体での中小企業の成長にとっては重要だが、シリコンバレーにおける好調な投資環境に大きな影響を与えることはなさそうだ。シリコンバレーのテクノロジ系新興企業に対しては、新しい投資先を探している情報通の投資家が大勢いる。資金源となるこうした人々は、高額な資金を提供できるだけでなく、新興企業に対して、人脈や戦術的、戦略的アドバイス、そして彼らのポートフォリオの中にある別の新興企業との連携といった、具体的な利益ももたらすことができる。
新興企業は、こうしたプロフェッショナルな投資家からの資金調達の方を好むだろう。さらに投資専門家は、投資獲得のために明らかにする必要のある極秘情報を守ってくれることが多い。そのため、テクノロジ系新興企業は、運営資金の大部分の調達には既存のシステムを利用し続けるだろう。
しかし、クラウドファンディング条項は、新興企業には便利なマーケティングツールになるかもしれない。十分な資金のある新興企業であっても、クラウドファンディングのために少額の株式を取っておくことはあり得ないことではない。そうした株式発行は、現行の(そして新しい)投資家の間で話題になる可能性が高いからだ。また、ある会社の本当のファンがその会社の将来的な成功に投資できれば、そうした人々はさらに強力な支援者になるだろう。Kickstarterが良い例だ。複数の製品開発チームが現在、資金調達のためというよりも、宣伝のためにこのサービスを使っている。
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