3月16日に発売された、第3世代となる「新しいiPad」。iPhone 4Sに搭載済みのRetinaディスプレイが搭載されるとあって、画面の美しさに寄せる期待は、新しいiPadの発表後ににわかに高まった。筆者も、どれほど美しい画面なのか、大いに期待した一人だ。発表と同時にオンラインのアップルストアで予約したため、16日の発売当日に受け取ることができた。iPadの初代から第3世代までの外見的な比較などは、「『新しいiPad』開封の儀 - 初代iPad、iPad 2との比較も」で既出のため、本稿では、主に、音質、画質、機能面に関してレビューする。なお、レビューの対象機種は、新しいiPad(第3世代)Wi-Fiバージョン、64Gバイトのホワイトである。
まず、Retinaディスプレイがどれほど美しいのか。iPhone 4Sを普段から使い慣れている筆者は、正直に言って電源を入れた直後の新しいiPadの画面には、予想していたほど感動しなかった。「iPad 2とそれほど変わらない」とさえ思った。しかし、この解像度の違いの素晴らしさは、新しいiPadを使い始めて数時間経ってから、じわじわと感じられてきた。「iPad 2ではどんな感じだったか」とiPad 2を手に取って画面をみた瞬間、「わ、粗い!」と思わず口に出してしまったほどだ。そして、改めて、新しいiPadのRetinaディスプレイを凝視してみると、文字にもアイコンにもまったくギザギザが見えない。それがRetinaディスプレイなのだから当たり前の話だが、iPad 2と比べてみて初めて実感したのだ。
たとえば、「National Geographic(英語版)」などの動画、写真、音声などが充実したグラフィカルなデジタル雑誌の場合、新しいiPadに表示されるページの美しさが格段にアップし、文字も写真も薄皮一枚をはいだようにくっきりと鮮やかに見える。Kindleで表示する電子ブックには文字にギザギザが見られない。また、Evernoteに保存した雑誌や書類のスキャン画像は、拡大しなくても文字が読める。iPad 2では、表示されたスキャン画像を拡大しなければ文字の小さな本文などは読めなかった。このように素晴らしい画面表示の改善により、Retinaディスプレイでは細かい文字でも目を凝らしてみる必要がない。あくまでも筆者の感想としてだが、連続して数時間見ていても目が疲れにくいと感じた。
そして、注目の500万画素のカメラを見てみよう。iPhone 4Sと比べれば見劣りするが、iPad 2から大幅に性能が向上しており実用性の面でも大いに評価できる。明るいレンズによって、室内の蛍光灯の下でも対象物の細部までが写し出される。小動物の毛並みなどもかなりディテールまで写し出されている。さらに、A4サイズがすべて収まる距離でピントが合うので、ドキュメントや新聞雑誌の記事などを、スキャナ代わりに撮影するという用途にも十分使える。欠点は、やはり重さだろう。Wi-Fiモデルは、iPad 2に比べて51g重い。たかが51g、されど51gだ。片手で動画や写真の撮影をしてみたが、1分くらいで腕がだるくなってくる。万一、片手で持っていて落としてしまったりしたら、元も子もない。両手でしっかりと持つ、ひざの上に置く、スタンドを用意して机に置いて撮る、といった使い方になるだろう。しかし、大きくて重くても、大画面で構図を確認しながら撮影するのは楽しい。また、iPhotoやiMovieといったアップル純正アプリでの編集は、サクサクと手軽に行える上、編集した写真や動画をTwitterやYouTubeなどで簡単に共有できる。新しいiPad1つで完結する気軽さは、何にも代え難い。
写真と動画の画質の良さを確認したところで、iTunesで購入したHD版の映画はどうだろうと「RENT」を再生してみた。すると、音質についてはほとんど気になるところがなく、自然に映画を楽しんでいたのだ。つまり新しいiPadのスピーカーの性能は、iPad 2と比べて大幅に向上したと言える。実際に聞き比べて見ると、iPad 2では音や音楽に広がりや立体感はなく本格的に映画を楽しむのなら、外付けのスピーカーが欲しいと思った。しかし新しいiPadでは、遠くの車の音は奥の方で近くの話し声は手前で響いているように感じられ、奥行きと立体感がある。また、低音もよく響いてシャカシャカした空洞感が少ない。新しいiPadなら、外付けのスピーカーはなくてもかまわないと思える。新しいiPadは、かなり音質にこだわっているのではないだろうか。
外部に出力される音声だけでなく、音声で入力できる「ディクテーション機能」にも注目だ。新しいiPadでは、音声入力が可能になった。残念ながらiPhone 4Sに搭載されている音声アシスタントのSiriではなく、キーボード入力の代わりに使用できる入力方式の1つという位置づけだ。筆者は、iPhone 4Sでも音声入力を愛用しているので、新しいiPadでも使えるようになってかなり助かる。iPadでは、パソコンのキーボードのようなタッチタイピングは難しいため、どうしても入力速度が遅くなる。それならば、ある程度修正しながらでも音声で入力した方が速いからだ。新しいiPadの音声入力の精度は、90%程度といった印象だ。想像以上に正確だと言ってよいだろう。そして、入力から変換までが速い(音声入力にはインターネットに接続している必要がある)。ただし、どのような音声認識エンジンでも、人によって認識のされ方には差があるので、誰でもが満足できる結果になるとは限らないことを付け加えておく。筆者は、東京で生まれ育った上に滑舌も良い方なので音声認識エンジンにとっては変換しやすい部類に入るだろう。
新しいiPadの特長を見てきたが、Retinaディスプレイの高精細な画面、鮮やかな発色、ディテールまで写し出すカメラ、臨場感あふれる音声など、どれをとっても新しいiPadには十分な魅力がある。ビジネスなら自社の製品のプレゼンテーションに使えばアピール力が増すかもしれない。プライベートでは、映画や音楽をどこででも高画質高音質で楽しめる。インパクトが薄いと思われた新しいiPadだが、使い込むほどに、手放せない逸品となるに違いない。
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