資料10は、東日本大震災で被害の大きかった「岩手」「宮城」「福島」の3県からの検索ログを調査した結果で、宮城県からの検索数がもっとも多かった。しかし、その宮城県の検索数の推移を見ると2011年1月1日~3月11日に比べて、3月11日~12日は3分の1ぐらいに大きく減少し、もとの水準に戻るまでおよそ10日かかっている。ライフラインがある程度復旧したのと、同じ日数といえるだろう。なお、下表1は被災地からの検索ワードを日ごとに追った(固有名詞は伏せた)もので、被災者が何を求めているかを探った。
表1:被災地からの検索 | ||
地震発生からの日数 | 検索クエリ | |
2011年3月11日(発生から1日目) | ○○ 水道 | ○○ 停電 |
○○ 水道局 | ○○ 停電 復旧 | |
○○水道局 | ○○ 停電復旧 | |
○○ 断水 | ○○ 停電情報 | |
○○ ガス | ○○ 電気 | |
○○ ガス局 | ○○ 電気 復旧 | |
○○ガス局 | ○○ 電気復旧 | |
3月12日・13日(発生から2・3日目) | ○○ 給水所 | ○○交通情報 |
○○ 給水 | ○○ 交通情報 | |
○○ 水 | ○○ 通行止め | |
○○ 避難所 | ○○ 停電状況 | |
断水情報 ○○ | ○○ 停電情報 | |
○○ 配給 | 停電状況 ○○ | |
○○ 食料 | 停電情報 ○○ | |
○○ 風呂 | 停電 復旧 ○○ | |
○○ お風呂 | ○○ 入浴 | |
○○道路情報 | ○○ 道路情報 | |
3月14日~(発生から4日目) | ○○ ガソリンスタンド | ○○温泉(もしくは銭湯名) |
ガソリンスタンド ○○ | ○○ 断水 復旧 | |
○○ ガソリン | ○○ 水道 復旧 | |
ガソリン ○○ | ○○水道局 復旧 | |
○○ 給油 | ○○ ライフライン | |
○○ スーパー | ○○ 炊き出し | |
○○ コンビニ | 炊き出し ○○ | |
スーパーマーケット名など | 地元新聞名など | |
- | 地元ラジオ局、テレビ局名 | |
3月15日~(発生から5日目~) | ○○水道局 復旧状況 | ○○ 安否情報 |
ガソリン 供給 ○○ | ○○ 安否確認 | |
ガソリンスタンド 営業 ○○ | ○○ 行方不明者 | |
○○ ガソリンスタンド 営業 | ○○ 避難所 | |
○○ ガソリン情報 | ○○ 避難所名簿 | |
○○ 石油組合 | 避難者名簿 ○○ | |
○○ ガソリン 給油可能 | 運行状況など | |
○○ 安否 | ○○ ○○ 高速バス | |
3月16日以降(発生から6日目以降) | ○○県庁 | ○○県警 安否確認 |
○○県警 | ○○県警 安否情報 | |
○○県警察 | ○○県警 行方不明者 | |
○○県警察本部 | 鉄道+時刻表 | |
○○県警ホームページ | - |
さらに、下表2は「停電」に関する検索を調査した結果で、東日本大震災が発生してから3日目ぐらいにピークを迎えた検索ワード。「東京電力」や「停電情報」など、停電に関するワードも非常に多く検索された。2006年8月14日に、東京都23区東部とその周辺139万世帯の住宅や鉄道などに電力が供給されなくなった大規模停電があったが、当時の停電に関連する検索数に比べて、今回の関連検索数は約8倍ぐらいあった。
表2:停電に関する検索 | |
カテゴリ | クエリ例 |
計画停電に関連するクエリ | 停電 |
計画停電 | |
輪番停電 | |
東京電力 | |
東北電力 | |
スケジュールを求めるクエリ | 計画停電スケジュール |
計画停電 スケジュール | |
計画停電予定表 | |
週間計画停電 | |
計画停電 予定 | |
停電時間 | |
地域名を含むクエリ | ○○ 計画停電 |
○○ 停電 | |
計画停電 ○○ | |
停電 ○○ | |
※○○は地名 | |
日付を含むクエリ | 計画停電 ▲▲日 |
計画停電▲▲日 | |
▲▲日 計画停電 | |
▲▲日計画停電 | |
※▲▲は日付 | |
グループ別クエリ | 計画停電 グループ |
計画停電 グループ分け | |
計画停電 第△グループ | |
※△は数字 | |
エリアの検索、地図 | 停電エリア |
計画停電 エリア | |
計画停電 地域 | |
停電地域 | |
計画停電マップ | |
計画停電 地図 | |
その他停電関連クエリ | 計画停電? いつまで |
計画停電 検索 | |
停電 過ごし方 |
最後に資料11は、2011年1月1日~2011年4月1日の「Facebook」(青)と「Twitter」(赤)の検索数の推移を見たグラフ。新しい連絡手段として震災後に多くのメディアなどで取り上げられたために急上昇したようだ。
これらの検索データを分析した池宮伸次氏は、「検索データだけを見ても、被災者や被災地で本当に必要な物事などを完全に把握できませんでした。言い換えれば検索データは“必要な物にたどり着くための情報”だったといえるでしょう」と総括した。
検索行動というのは、たとえば「紙おむつが足りない」「粉ミルクがない」など、そういう人がいても検索で「紙おむつ」「粉ミルク」とは検索しない。それを買うお店の名前を調べるとか、売っている場所とか、それを購入するのに必要なお金を手にするために「銀行」検索するなど、物資そのものを調べたりはしないというわけだ。検索データを見ただけでは、被災地や被災者に必要な情報は“これだ”とはなかなかわからず、「Twitterなどの『○○が足りません』といった投稿データを併せて分析しないと、別のアプローチを考えないとわからないのではないか」(池宮氏)という。
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