「復興は会津から」として、会津若松市と会津大学、アクセンチュアの3者は、協力して会津若松市、ひいては福島県、日本全体の復興に向けて取り組むことを先月発表した。そして、アクセンチュアは8月1日にその拠点となる「福島イノベーションセンター」を福島県会津若松市に設立し、5名のコンサルタントで活動を開始した。
県や市、大学をはじめ、地元企業、有識者の意見も踏まえた産業振興や雇用創出策の検討を開始するということだが、具体的にはどのような活動をしており、何を目指していくのか。経営コンサルティングやテクノロジーサービス、アウトソーシングサービスを提供するグローバル企業のアクセンチュアの真意などについて、アクセンチュアの福島イノベーションセンター センター長である中村彰二朗氏に聞いた。
なお、会津若松市では8月7日に市長、市議会議員選挙の投票が実施され、即日開票の結果、元県議の室井照平氏が新市長になった。3者の発表時とは市長が違うが、新市長はこれまでの考え方を継承するということで、協力関係にまったく変わりはないという。
今回のプロジェクトに関しては、たしか4月20日が第1回目のミーティングだったと記憶しています。経済産業省や総務省などと復興に関するミーティングにはいろいろ出席していましたが、その中で東北の被災地の方々が東京にいらっしゃって現地の実態をお話ししていただく説明会などもありました。その中で、会津若松市の方の話に感銘を受け、これは外資系が乗り出す価値があるのではないかと思ったんです。外資系が次々と撤退している状況でしたたので、逆にそう考えました。
会津若松市は、福島県東部の浜通りとは違って風評被害しかないんです。風評被害は相当恐ろしくて、会津若松市の東山温泉にいらっしゃる大熊町(東京電力福島第1原発事故により福島県大熊町の住民が集団避難)の方々がもし町に戻ったら、東山のお客さんはゼロという状態なのです。そういうことも含めて、国は常に直接被害のところにばかり手厚くしているので、我々がやるべきことは、まず風評被害を沈静化させることです。
国の政策でいうと、観光庁のビジット・ジャパン(訪日外国人旅行者数を将来的に3000万人とすることを目標としたプログラム)や、経済産業省のクール・ジャパン(デザインやアニメ、ファッション、映画などクリエイティブ産業の海外進出促進、国内外への発信や人材育成などを推進する施策)などにつながっていきますけど、福島の中で「会津若松は大丈夫」ということになれば、日本は大丈夫と発信できるので、そういったことに取り組んでいきたいというのが、着手点です。
この話は、会津若松市や商工会議所などいろいろな方々とお話しして、地元からも非常に期待されています。私自身は週初めは会津若松市にいて、だいたい木曜日、金曜日は東京に行くようにしているんですが、こちらの状況を経産省や総務省、国交省、文科省などに常に報告するようにしています。会津若松市を復興の基地として、浜通りなどをサポートしていくといったイメージです。
僕が宮城県出身ということがあったかもしれません。センター長に決まったのは7月中旬ぐらいですが、本社とテレビ会議を1日行っただけでこのプロジェクトは決まりました。もちろん、社員のこともあるので、客観的なデータをきっちり見なければいけないし、リスクマネジメントの部隊にも報告しなければなりませんでしたが、この放射線量の状況ならば大丈夫ということで進んだのです。我々の健康もチェックされています。それにしても、早かったですね。アクセンチュアの日本の社員もいい意味で驚いているんじゃないかな。よく決断してくれたという感じです。
実際にさまざまな客観的データを見ると、会津若松市は東京と変わらずほぼ一緒です。でも、本当に人が来ないのです。喜多方や奥会津、猪苗代などに行っても、観光客がいません。湖などもきちんと検査して大丈夫なのにいない。我々ももっとメッセージを出していきますが、山形とか秋田とか、日本海側もすごい風評被害にあっているんですよ。東北の復興は3県と決められているし、もしかするとその3県の中でも山側は外されるかもしれないといわれているので、こうしたことをまずは訴えていきたいのです。
それも、福島を選んだ理由のひとつです。もちろん、まだまだ大変なのはわかっていますが、宮城や岩手は復興の形などが見えつつあるんです。ざっくりいうと、あとは時間とお金の話だと思います。しかし、福島は時間をかけても手が付けられない状態にあるんです。原発の被害のある浜通りなどがありますから。人が行けないので、逆にITでサポートできることはたくさんあると思います。実際に浜通り側は、自治体をはじめさまざまなコンピュータが流されてしまって、データを失っているんですよ。自治体クラウドなどがなかなか進まない部分もありましたが、それこそクラウドを活用するなど、今回はもう否応なしに進めざるを得なくなると思います。ITの真価が問われる感じですね。
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