要するに、iPodはAppleが消費者に売り込んだとき、比較的高価な単一目的デバイスだったが、iPadはこの公式を完全に逆転したものだ。iPadの基本価格は業界でもとりわけ安かった(今でもそうだ)。そして、その機能はゴミ出し以外なら何でもできそうなほどだ。iPodとの数少ない共通点の1つは、エンターテインメントを提供するというセールスポイントである。
競合各社のデバイスは、特定の目的に機能を絞る(「Nook Color」など)か、機能追加によって利便性を高める(「MOTOROLA XOOM」)という両極で打倒Appleを目指している。だが、いずれのアプローチでも、単独でiPadより本質的にエンターテインメント性に優れた製品が生まれることはないだろう。筆者としては、エンジニアにお金を払ってスペック表を強化することよりも、消費者を喜ばせることに力を入れるメーカーが増えてほしい。
娯楽に関しては、Appleに勝てる可能性を秘めた企業がいくつかある。Microsoft、ソニー、Amazonはすべて、魅力的なメディアやゲームをタブレットにもたらすためのコンテンツと影響力を有しており、協力会社との関係を築いている。とはいえ、Microsoftやソニーは、iPod時代にシェアを奪えなかったことを考えると、規模と洗練度を増したライバルに戦いを挑む可能性は低いかもしれない。
iPadはiPodと同様に、競合他社にとってありがたい存在でもあれば、厄介な存在でもある。一面では、この2つの製品は苦戦していた技術ニッチ市場を莫大な金額が動く一大産業に変え、競合他社が規模の大小を問わず市場に参加できる扉を開いた。残念ながら、いずれの市場でも、楽観視されているほど実際のチャンスは多くないようだ。
iPodについては、真剣に取り組んでいる競合としてCreative、SanDisk、Microsoft、ソニー、東芝などがいた。メーカー各社は、独自のハードウェアとソフトウェアで一から独自ブランドのiPod対抗製品を作り上げた。
図面上では、iPodより優れたMP3プレーヤーを作ることはさほど難しくなかった。iPodは高価で、FMラジオのような基本的な機能がなく、サポートされる音楽ファイル形式も限られており、(当初は)色も1色しかなく、音質も特に優れているわけではなかった。iTunesで購入する楽曲は、独自のDRMで保護されており、Appleの製品やサービスでしか使用できないようになっていた。
これらのすべての欠点をもとに、競合各社は勢い込んでiPodを批判し、自社のリーズナブルで機能豊富なiPod対抗製品を推奨した。時には、人気を得た製品がいくつかあった。例えば「Creative ZEN Vision」はiPodに先がけて動画再生に対応したが、その後間もなくAppleがよりスリムな動画対応iPodを発表すると、すぐに影を潜めてしまった。
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