米国時間3月14日に開催のHP Summitは、Hewlett-Packard(HP)の新しいリーダー新しいリーダーLeo Apotheker氏を大々的にお披露目するイベントとして宣伝された。風船や紙吹雪はなかったが、Apotheker氏は財務面での展望と、今後同社が参入を目指す新規事業について語った。金融界の人たちが聞きたがる類の話だ。
しかし、現在コンシューマー向け技術の分野で話題になっているのは、今が「ポストPC」時代なのか、また、タブレットやスマートフォンの時代なのかということだが、Apotheker氏はデジタルデバイスの話題にはほとんど時間を費やさなかった。世界最大のコンピュータ販売メーカーであるHPについて、同氏が14日に示したビジョンは、企業向けサービスが中心となっており、大容量データ、クラウド、リアルタイム分析といった語句が登場するものだった。言い換えれば、コンシューマーが通常関心を持たないような内容だ。
HPの新しい最高経営責任者(CEO)のApotheker氏が、ビジネス指向の強いドイツのソフトウェア大手SAP出身であることを考えると、HPは今後コンシューマー分野よりも企業分野に力を入れていくのではないかという懸念が生じたとしても無理はない。しかし14日にApotheker氏が話した内容からバズワードをすべて取り除いてみれば、HPがコンシューマー向け製品に重きを置かなくなるわけではなく、むしろその分野で大規模な計画を持っていると言っていることが分かる。
HPは、長年そうだったように、現在も世界最大のコンピュータおよびプリンタのメーカーだ。しかしHPの製品は、価格と一部の設計上の特徴を除けば、実際のところ競合他社のハードウェアとそう違わない。Apotheker氏は、ノートPCとプリンタの各種モデルについては多くを語らなかったが、この2つの重要な事業と、Palmの買収で手に入れたモバイルOS「webOS」がどのように統合されるかという面からは、両事業についてある程度の時間を割いて語った。
webOSは現在のところスマートフォンで利用できるが、2011年夏にはHPのタブレット「TouchPad」でも利用できるようになる予定だ。そして2012年には、HPが販売するすべての「Windows」搭載PCと、一部のプリンタでも利用できるようになる予定だとApotheker氏は述べている。そのPCはかなりの数になる。HPの2010年のPC販売台数は6000万台だった。しかし、Apotheker氏はさらに大きな数字を考えている。同氏は14日、HPは2012年に1億台のデバイスにwebOSを搭載することを目指していると述べた。
それがどのような形で実現するのかについて、あまり詳細には説明しなかったが、Apotheker氏のメッセージは明らかだ。同氏が望んでいるのは、HPが自社のハードウェア全体を統合するソフトウェアプラットフォームを持つことによって、HPのPCを他のWindows搭載マシンと差別化し、HPのプリンタをBest Buyにいくつも並んでいる同じようなプリンタと一線を画すものにすることだ。
スマートフォン、タブレット、コンピュータに統合的なソフトウェアが搭載され、個人データをデバイス間で簡単に転送できるというのは、どこかで聞いたような話だ。Appleが「iOS」「Mac OS X」「iTunes」で競合他社との差別化を図っているのは、まさにこの点だ。
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