「Flash Player」の開発をできる限り急ピッチで進めようとしているAdobe Systemsは、プログラマーがさまざまな新しいオーディオツールを使用できるという「Flash Player 10.3」のベータ版を公開した。
このオーディオ対応機能は、ネットベースの音声通信ソフトウェアを開発するプログラマーにとって非常に便利なものかもしれない。具体的には、ノイズの抑制や反響音の解消、人が話を始めたときや話し終わったときを検知する機能、マイクの音量を補正して声の大きさを一定にする機能などがあるという。Flash製品マネージャーを務めるThibault Imbert氏が米国時間3月7日夜のブログ記事に記している。
しかし、より広い視点で見てみると、今回のバージョンにはFlashの競争力を維持しようとするAdobeの強い姿勢が表れている。Flash Playerは、絶滅の危機と闘っているとまではいえないとしても、ほぼすべてのブラウザに同プラグインがインストールされていることを前提と考えて差し支えなかった数年前に比べれば、さほど安泰とはいえない立場に置かれている。
AdobeはFlash(とその親戚筋にあたる「Adobe AIR」)を、さまざまなコンピューティングデバイスで動作するソフトウェアの基盤にしようとしているが、Flash技術は2つの大きな課題に直面している。第1の課題はモバイルデバイスだ。モバイルデバイスは、Flashを扱うための処理能力とメモリが不足していることがあり、実際にAppleの「iOS」ではFlashが完全に排除されている。第2の課題は、各種ウェブ標準が成熟してきていることだ。先述のFlashに対応していないモバイルデバイスでのタスクをはじめ、以前はFlashが必要だった多くのプログラミングタスクをウェブ標準で処理できるケースが増えている。
Adobeはそういったウェブ標準に対応することで、Flashにまつわるリスクを分散させようとしている。そのことを最もよく示している例は「Adobe Wallaby」だ。Wallabyは、Flashの要素を書き換えて、HTML、CSS、JavaScriptなどのウェブ標準を使用できるようにする。Adobeはこの技術をFlashプログラマーたちがiOSデバイスに手を伸ばすための手段としてアピールしている面もある。
Adobeのプリンシパルプロダクトマネージャーで、モバイルデバイスアプリを担当するJohn Nack氏は、8日のブログ記事に「Adobeの仕事は問題の解決を支援することであって、ある技術と別の技術のどちらが良いかということにこだわることではない」と記している。
しかしAdobeは、Flashを積極的に推進することも続けている。
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