NTTドコモは、4月1日以降に発売する機種のすべてにおいて、SIMロック解除機能を搭載する。1月28日に行った2010年度第3四半期連結決算の会見でも、その点に改めて言及。他社に先駆けて、SIMロック解除に取り組む姿勢を強調した。
SIM(Subscriber Identity Module)とは、携帯電話の電話番号情報などが入ったカードのこと。一般的に言う「SIMロック」とは、携帯電話の端末側で、携帯電話を販売したキャリア以外のSIMカードでは通信回線を利用できないように制限する機能のことだ。SIMロック解除は、この制限を解除するもので、SIMカードを取り外して、他社の携帯電話に挿せば、回線契約はそのままで他社の端末を利用できるようになる。
現状、NTTドコモとソフトバンクモバイル(ソフトバンク)は、通信方式が同じW-CDMAであるため、SIMロックが解除されればカードを相互に入れ替えて利用できるが、KDDI(au)の場合は通信方式が異なる(CDMA2000)ため、SIMロック解除が実現したとしても、そのままカードを入れ替えて利用することはできない。SIMロック解除は、総務省が促進しているもので、2011年度からの解除を行うことを通信各社に促している。
NTTドコモ社長の山田隆持氏は「SIMロック解除を行いたい利用者は、ドコモショップで申し込みをいただくことになる。iモードが他のキャリアでは使えなくなるなどの重要事項の説明に対して同意していただいた上で、SIMロックの解除を行う」とする。
その一方で、「いくつか検討すべき事項がある」とし、「SIMロック解除時に説明すべき事項の整備や、SIMロック解除後の端末動作に関する参考情報の公開、さらに故障した際には、どちらのキャリアが修理対応をするのかといった事業者間体制の整備が必要である」と語る。
SIMロック解除は、NTTドコモにとって、戦略的な施策といえるものだ。というのも純増数拡大において、SIMロック解除が切り札になる可能性があるからだ。
山田氏は「第3四半期は、我々の主要目標を着実に達成する内容になった」と自信をみせる一方、「課題をあげるとすれば、番号ポータビリティと純増の2点に尽きる」と語る。
同じ電話番号を使用したまま他社に移行する「番号ポータビリティ(MNP)」においては、ドコモの場合、依然として出超(他社への番号移行のほうが多い)状況となっている。「出超となっているのは、iPhoneの影響が大きい。番号ポータビリティの出超がゼロになれば、純増数はさらに増加する」と語る。第3四半期における純増数は35%増の113万台となっているが、その数ではiPhoneを擁するソフトバンクの後塵を拝している。
しかし、iPhoneによる影響は、徐々に減少傾向にあり、「10〜12月にかけて、出超数は減少している。スマートフォンのラインアップをそろえてきたことが大きな要因であり、良いスマートフォンを出すことでこれからさらに減少してくるだろう」(山田氏)と期待を寄せる。
そしてNTTドコモでは、SIMロック解除をiPhone攻略に向けた大きな一歩ととらえている。NTTドコモは、ソフトバンク独占のiPhoneを扱えないことで、スマートフォン市場では苦戦を強いられてきた。しかし、SIMロック解除によって、iPhoneをドコモの回線で利用できる環境が整う可能性がある。
現時点では、ソフトバンク側がSIMロック解除に慎重な姿勢をみせているため、ソフトバンクの販売するiPhoneにドコモのSIMカードを挿して利用できるようになるかは未知数だが、海外で流通しているiPhoneには、すでにSIMロック解除機能が搭載されており、これを購入すれば「iPhone+ドコモ」の環境が整うことになる。
山田氏は、「通話品質と通話エリアの広さでは、ナンバーワンの評価を得ている。これがスマートフォンの世界でも重要な武器になる」として、ドコモならではの通話品質とSIMロック解除とを組み合わせることで、回線数のシェア拡大を目論む。
SIMロック解除にいち早く参入を表明したドコモに対して、ソフトバンク、KDDIはどんな手段で対抗するのか。2月3日に行われたソフトバンクの決算発表でも、孫正義社長はこの問題について一切コメントをせず、会見終了後に「一部の機種では検討している」との姿勢をみせただけだ。現在、同社の好調な純増数を支えているiPhoneでの対応は見送る公算が強いだろう。4月から始まる2011年度においては、スマートフォンの展開に加え、SIMロック解除を巡るキャリア各社の攻防も注目のテーマとなる。
◇SIMロック解除のポイント
2011年のモバイル業界展望--SIMロック解除における3つの重点
スマートフォンの普及で市場は変わる--山根康宏が見る日本のSIMロック
ソフトバンクモバイル、懐疑的ながらSIMロック解除「1〜2機種からテストする」--単価は値上がり
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