車輪からルータまで、人間がテクノロジを使って世界を変えてきたのと同じくらい、テクノロジも人間を変えてきた。そうした変化が起こるたびに、われわれはテクノロジの長所と短所のバランスを取ろうと苦労してきた。
ここ数十年の間に登場したテクノロジで、インターネットとウェブ以上に文化や学習、コミュニケーションに大きな影響を与えたものがあるとは思えない。しかし、作家のNick Carr氏は著書の「The Shallows: What the Internet is Doing to Our Brains」の中で、インターネットによって創造性と情報が爆発的に増大したことにはマイナスの面もあると主張している。人間の知性が浅はかになってきているという(the shallowsは「浅瀬」の意)。
Carr氏が懸念するのは、情報を容易かつ瞬時に入手できる世界で、われわれは自分の頭で考え、研究や熟考、率直な議論を通して特定のテーマを深く理解する能力を失っているということだ。同氏は、人間の脳が時間の経過とともに新しい刺激に適応していく仕組みについて詳述した豊富な研究結果を引用し、マルチタスクやハイパーリンクによって過大な負荷を受けている現代人の脳は原始的な状態へ戻りつつあり、深遠な思考を促す書籍の力によって育まれた何世紀にもわたる文化とテクノロジの進化が排除されようとしていると仮定した(Carr氏は2週間前、米CNETのインタビューを受け、同氏の最新作について話した。興味のある方は、この記事内の動画を参照してほしい)。
Nick Carr氏は扇動者と称されることがよくある。同氏の処女作である「Does IT Matter?」は、あらゆる企業が価格下落と機器の性能向上を理由にITを導入するようになると、ITはコモディティとなり、競争の上で有利な武器ではなくなるという主張を展開し、テクノロジ業界から嫌悪された。2作目の「The Big Switch」では、クラウドコンピューティングによって、コンピュータ業界に重大な変化が訪れようとしており、その変化にはプライバシーと情報管理に関連した、あらゆる予想外の結果が伴うと主張した。この書籍は、クラウドコンピューティングやWeb 2.0テクノロジの支持者から、扇情目的の嘆きであると非難された。
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