N・カー氏の新著書に見る「人間の脳とウェブ」--「知性の浅瀬」と向き合うには - (page 2)

文:Tom Krazit(CNET News) 翻訳校正:川村インターナショナル2010年07月09日 07時30分

 「The Shallows」は「The Big Switch」の続編といった感じで、前作と同様、極めて単純な反応と、思慮に満ちた反応の両方を巻き起こしている。このような反応を示しているのは、以前は一握りの人しか利用できなかった事実や情報をさまざまな視点を持つ多くの人々が利用できるようになったという点で、情報へのアクセス拡大が実際に世界の人々を聡明にしていると考える人々だ。

 しかしCarr氏は、この世界は途方もない速度で動いているため、人々は実際にこうした情報のすべてを処理できるわけではないと主張する。結局のところ、われわれにできることといえば、情報の洪水にのみ込まれるのを避けるため、次の電子メールやRSSフィード、ツイートに進むことくらいだ。21世紀の世界で働いている人のほとんどが、何度かそういう経験をしたことがあるだろう。

 Carr氏は次のように書いている。

 コンピュータネットワークは、情報の作成、保存、共有に必要なコストを劇的に削減することによって、われわれが過去にアクセスできた情報量よりもはるかに多い情報を、われわれの手に届くところに置いている。そして、Googleのような企業が開発した、情報の発見とフィルタリング、配信を可能にする強力なツールによって、われわれは自分が興味のある情報の洪水を絶えず浴び続けることになった。その情報量は、人間の脳が処理できる範囲をはるかに超えている。情報過多は恒久的な悩みの種になった。それを改善しようと努力しても、問題は悪化する一方である。唯一の対処方法は、流し読みと拾い読みをする時間を増やして、問題の根源である、驚異的な応答速度を持つマシンへの依存度をさらに強めることだ。

 最終的にCarr氏が正しいかどうか、現時点では知る由はない。現代的なメディアの世界に圧倒されている人がいるからといって、皆が「Jersey Shore」のクローンやFacebookの過剰共有に満ちた一生を送る運命にあるわけではない。もちろん、インターネットが本当にわれわれを愚かにしたり、聡明にしたりしているわけではなく、われわれが元々持っている聡明さや愚かさを効果的にさらけ出しているだけという可能性もある。

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