電気自動車を研究開発するSIM-Driveは1月22日、2013年の量産を目指して電気自動車を試作すると発表した。いすゞ自動車や三菱自動車のほか、NTT東日本、オリンパス、パイオニアなど34社・機関が開発に参加する。
SIM-Driveは2009年8月に設立された企業。慶應義塾大学環境情報学部教授の清水浩氏が電気自動車「Eliica」の開発を含む研究成果を元に創業した。清水氏が代表取締役社長を務めており、取締役会長にはベネッセホールディングス取締役会長兼CEOの福武總一郎氏が就任している。
SIM-Driveでは、インホイールモーターとPlatform by SIM-Driveという2つの独自技術を活用した電気自動車の試作に取り組む。インホイールモーターとは自動車のタイヤホイールの中に直接モータを内蔵する技術で、エンジンの替わりにモーターを搭載する従来の電気自動車の方式に比べて、航続距離を30〜50%伸ばせるとのことだ。
Platform by SIM-Driveは車体の床下に中空のフレーム構造を作り、その中に電池やインバータ、コントローラといった主要部品をすべて収納する技術。これにより車体のデザインがこれまでの自動車に比べて自由になり、空気抵抗の低いクルマを作り出せるという。
この2つの技術は既存の自動車にも取り付けることが可能とのことで、「既存の車を改造して電気自動車にできる。これらの技術を電気自動車のデファクトスタンダードにしていきたい」と福武氏は意気込んだ。
SIM-Driveではまず1年かけて大量生産可能な試作車を制作する。開発に参加する企業や機関は参加費用として各2000万円をSIM-Driveに支払う代わりに、試作車の仕様書や基本図面、走行試験などの結果を入手できるほか、試作車両を自由に利用できるという。また、要望などを試作車に盛り込むことが可能。参加企業が自由にアイデアを出し合い、成果を共有できることから、SIM-Driveではこの開発スタイルを「オープンソース型」と呼んでいる。ただし、オープンソースソフトウェアとは異なり、参加外の企業が仕様書などを見ることはできない。
プロジェクトは1月19日に開始している。最初の2週間で基本的な電気自動車の技術や知識を共有し、その後3週間で試作車の性能や車種、材料などについて議論するとのこと。その後、年末までに車体を完成させ、2011年3月までには組立車としてナンバーを取得したいとした。
その後、2011年から2012年にかけて、SIM-Driveは自動車メーカーに対し試作車の量産化を支援する。メーカーが量産に入るのは2013年になる見通しだ。
「構造が簡単なので、車体価格はガソリン車と同等、もしくはそれ以下になるだろう。電気で動くためランニングコストは安いので、電池と電気代を合わせるとガソリンの値段と変わらないくらいになるのではないか」(清水氏)
車のデザインに関しては、フェラーリなどのデザインで知られる奥山清行氏がディレクターを、Eliicaをデザインした江本聞夫氏がチーフデザイナーを、デザインプロデューサーの畑山一郎氏がゼネラルマネージャーを務める。
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