消費者が選ぶべきはコピー制御か補償金か--私的録音録画補償金問題は新局面に - (page 2)

 最後はこの説の張本人となるメーカーだが、広報レベルで回答が得られる内容ではない。そこで形を変えて「B-CASカード発行に伴い貴社が受ける年間利益」をたずねてみた。すると「(B-CASが)公表している事業報告・計算書類・監査報告書に記載されている事項以外で弊社より公表させて頂いている数字はございません」(パナソニック)と回答があった。

 ちなみにB-CASが公表する2009年3月期の事業報告書によれば、B-CASの製造委託先であるパナソニックシステムソリューションズジャパン(パナソニックの子会社)との取引金額は約35億円で、内容は「資材の仕入れ」。同期の売上原価が約94億円なので、およそ3分の1程度にあたる。東芝、パナソニック、日立のメーカー3社はB-CASシステムの技術的根幹を担っているためほかにも何らかの取引(ライセンス料など)が発生していると推測されるが、残念ながらこれ以上の詳細はわからない。

 「B-CASによるコピー制御は放送局とメーカーが決めたこと。それがあるから補償金を撤廃する、という理論は到底受け入れられない」とは、ある権利者団体関係者の言葉だ。純粋に「権利者の利益を守る」という観点からすれば正直、コピー制御でも補償金でも構わないはず。それでも補償金存続にこだわってしまうところには、利益が還元されるシステムであるからだろう。

 一方メーカー側から見れば、補償金が撤廃されれば当面、コピー制御(とりわけ現行のシステム)をなくす動きは封じられる。しかし、メーカー各社が将来に向けて検討するホームネットワークにおいて「B-CASカードやスクランブル放送は障壁になる」との見方も強く、正直、現行システムの続行を強く望んでいるとは思えない。カード枚数が増えれば増えるほど一部メーカーとの取引金額が増えることも事実だが、物事をそこまで短期的に考えるかどうか、疑問は残る。

 「コンテンツ立国」への期待が高まる中、権利保護関連の制度やシステムを全廃することなどあり得ない。権利保護のためのシステムとして選ぶべきは補償金か、コピー制御か、はたまた別の道があるのか。仮にSARVHが司法の場でメーカーに勝利した場合、これまでの「補償金不要」という声に対して、「コピー制御不要」が改めて唱えられるかもしれない。もちろん、「両方残る」という可能性が最も高いが。

 権利者、メーカーどちらの味方をするかはさておき、この数カ月に起こった出来事は、消費者が将来の著作権保護について考える絶好の機会となったのではなかろうか。

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