森祐治・情報経済への視点--行政刷新会議に見るコンサルタントのつぶやき

事業仕分けの対象に男子の好きなモノが多いのはなぜか?

 行政刷新会議が行っている「事業仕分け」では、ITやらコンテンツ、科学、ロケットといった類(スポーツもそうだ!)は、なぜか滅法、分が悪い。

 いや、よくよく見てみると、巨額の政府予算の中で、僕ら(男子、それも一般の、と勝手に読者のみなさんを一律、僕と同類とみなしてのことだが)が好きな領域ばかりが選ばれているといっていい。そして、それらの予算額は、イチ家計と比べれば巨額だが国家予算の中では弱小もいいところのものばかりのものが「仕分け」られているという印象がある。そう考えると、果たして仕分ける意義とはどのようなものなのか、と改めて思う。かつて小泉首相の動向をして「小泉劇場」と呼んだように、口八丁の民主党議員の「手際の良さ」というパフォーマンスをこそ示すことが目的ではないのか、と勘ぐってもしてしまう。

 とはいえ、そもそも国民が望んだのは、頭が切れるエリートよろしくバッサバッサと多種多様な事業を切り倒すパフォーマーではなく、話を親身に聞いてくれる感覚を持った政治家であって、これを「国民目線」やら「市民目線」でのアクション志向と言ってしまうと話は違う。旧社会党などのカン違いは、もう結構!政治は、国民やら市民と同じ発想や価値観でやったらダメなのだから!

 そして、根拠なくマニフェストに上げられた項目(なぜマニフェストが絶対なのかの評価はどこにもない!)を遂行する予算の捻出のためだけに、財務省が差し出したリストに載っている事業(=かつ、切っても民主党的に、そして財務省的に差支えがない)を予定調和で切り落としてほしいわけではない。社会心理学での知見として、概してネガティブ・キャンペーンは双方ともに失点として受容されることが知られているが、官僚を仮想敵とする民主党にとってそうはなるまいか……。

 しかして、切るにしても切る基準が不在だ。何でもかんでも、いきなり効率やら意義と言われても、その効率の評価軸や意義の定義がないままに、どうやって判断ができようか。いみじくも科学未来館の毛利館長の発言のように、効率などを度外視して、「こうあるべき」という発想に基づいた国ならではの先行投資分野として、先端や基礎といった領域の科学・技術、そしてその啓蒙を行う教育なくして、この国の成長はないだろう。もちろん、弱者救済も重要なのだろうが、成長なくして弱者救済もへったくれもない、ということは、数々の実証研究などから明らかだろう。それでも、という主張があるのであれば、それらのプライオリタライズをまずすべきだろう。それなしで、いきなり仕分けも何もあったものではない。「仕分け」という名の枝葉落としとの「落とし前」は、いつどのように生じるのか。行く末は恐ろしいとは、まさにこのことではないか。

 挙句の果てに、事業仕分けの結果に対して、各省や議員からの陳情がなされ、場合によっては復活もあるという。「えっ?」と思う人も多いだろう。これが「公開処刑」と揶揄される根拠ではないか。もちろん、無駄はたくさんあるはずだ。実際、一国民として、「こんなことにこんな予算が立てられていたの!」と思うものも、少なくはない。しかし、その事業の当事者にとっては、そんな印象などには構っていられはしないだろう。もちろん、それを言い始めたら既得権益者が何も譲りはせず、何が無駄なのか分からなくはなってしまう。しかし、何が無駄のなのかを規定する価値観の提示なくして、なにができるというのだろうか。それなくしては、単なるパフォーマンス以上でも、以下でもない。

 正直、僕ら男子が好きな領域の事業が数多く事業仕分けの対象になってはいまいか、という疑問で見てみたが、その議論の結論は今現在、ない。しかし、そういった素朴に「好キ」といえるものをパフォーマンスとして見事に切り落とすことで、国民に対して一種の決別(それが何からの決別なのかがわからないのが、気持ち悪いのだが……)を求めているという表象的な意味合いはありそうだ。だが、そんな表象的なコミュニケーションというのが、重要なのであるとしたら、もうちょっとスマートなコミュニケーション・デザインがあったに違いないのに、と思うのは僕だけだろうか。

 いずれにしても、僕がかねがね言っているような、「ガンダムが本当にできるか、オープンに検討してみよう!」なんて議論は、もしそんな表象論的な効果を求めているのであるとしたら、真っ先に切られてしまうのだろうなぁ……。残念(!?)。

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