医薬品のネット販売規制はクリスマスイブにひとつの節目

別井貴志(編集部)2009年10月23日 05時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 一般医薬品のインターネット販売規制が実施されてから約4カ月が経過した。この規制が今後どうなるのか、12月24日にそれを見極めるひとつの節目を迎える。やはり、「対面販売の原則」についてが大きな鍵のひとつだ。

 改正薬事法は6月1日から施行され、一般医薬品を副作用リスクの高い順に第1〜3類の3種に分類。そして厚労省が定めた省令では、第1類に加えてそれまで販売できた第2類の医薬品までを、新規顧客にインターネットなどで通信販売することを禁じた。同じ医薬品を続けて利用する人や離島に住む人などは継続販売を例外的に認めているが、これも2年間に限定した経過措置になっている。

 この省令公布までには、賛否両論の意見が出されたが、そうした議論をつくしたかどうかについては疑問を投げかける向きが多かった。

 こうした中、健康食品や医薬品などをインターネットで販売するケンコーコムと有限会社ウェルネットは5月25日に、一般用医薬品ネット販売の権利確認請求および違憲・違法省令無効確認・取消を求め、国を相手取って東京地方裁判所(東京地裁)に提訴した。

 裁判は、これまで7月14日に「第1回口頭弁論」、9月1日に「第2回口頭弁論」、10月20日に「第3回口頭弁論」が行われてきた。

 第3回口頭弁論では、ケンコーコムら原告が「準備書面(3)」(口頭弁論での主張に備えた陳述内容書類)を、国が「求釈明に対する回答書(2)」(求釈明とは裁判官が当事者に求めた説明)、「準備書面(2)」をそれぞれ陳述し、証拠の提示もされたほか、今後の予定などが示された。

 原告側が準備書面(3)で今回主張したのは以前からの主張も含めて大きく4点。

  1. 改正省令は違憲である
    ・改正省令は憲法22条第1項(職業選択の自由)に違反するという点について、被告は誤った主張をしている。
    ・すなわち、被告は薬事法違憲判決に関し、一職業活動の様態を規制するにすぎないから、「よりゆるやかな制限の存否は問題とならない」との解釈をしている。その被告の解釈が誤ったものであることを、過去の最高裁判例の分析を通じて具体的に明らかにした(*)。
    ・また、改正省令は、その必要性を検討する以前に、法文を読むだけでその矛盾は明らかであるから、上記の議論をせずとも文面上違憲無効である。

  2. (*):最高裁判例の趣旨は、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならないというものであって、被告のような単純思考で違憲性判断基準を選択する立場をとっていないこと。
    この点、規制の今回の規制が、従来認められてきた第1類、2類医薬品のネット販売を、その情報提供の方法如何を問わず、一律に禁止するという強度の規制であり、ネット販売業者からすれば職業選択の自由そのものの規制であることから、上記最高裁判例の解釈に照らせば必要性と合理性を審査し、規制を必要最小限度にすべきであり、厳格な「合理性の基準」(よりゆるやかな制限では立法目的を達することができる場合には違憲とする審査基準)が適用される、つまり「明白性の原則」(規制が著しく不合理であることが明白でない限り合憲とする審査基準)が適用されない。
    しかも、本件規制に合理性は全くないから、いかなる審査基準を取って も、合憲という結論になるはずがない。
  3. 「対面の原則」は立法者の意思ではない
    ・国は、断片的な国会の議論、審議会の議論の都合の良い部分のみを集め、「対面の原則」は立法者意思と決め付けている。議論においては対面の原則に異論を唱える意見もあったのに、敢えてこれに言及していない。
    ・立法者の意思は法文となるのであるから、誰かが審議において発言したらそれが直ちに立法者意思になるわけではない。
    ・法文に「対面の原則」が記載されていないばかりでなく、裁判所が前回期日において指摘した国会の附帯決議においても、「対面の原則」に関する言及、ネット販売や通信販売の禁止には一切言及されていない。仮に立法者が対面の原則を採用し、ネット販売禁止を行うなら、法文に、少なくとも提案理由説明、附帯決議に出てこなければおかしい。
    ・厚生科学審議会検討部会、国会においても、「対面の原則」は定義もされず、被告が主張するような十分な議論はされていない。そして最後まで、「対面の原則」とはなにかを、検討部会座長を含め、誰も理解していない。
    ・対面販売の原則という被告の主張は、国会で議論されなかったこと、内閣法制局の審査を受けなかったことの後出しじゃんけんである。
  4. 「対面の原則」は矛盾だらけで論理破綻している
    ・「対面ではない」ことからネット販売は規制されたが、店頭ならば代理人に販売できる。
    ・大半の医薬品の情報提供が「努力」のみで義務ではないので、店頭であれば何ら説明もせずに販売できる。
    ・実際、6月以降もこれまで同様、医薬品購入に際し、説明を受ける機会はほとんどない。
  5. 改正省令は改正薬事法の委任の範囲外である
    ・被告が授権の根拠とする改正薬事法第36条の5(販売に従事するもの)からは、ネット販売禁止の授権は読み取れない。
    ・改正薬事法第36条の6(情報提供等)は、「情報提供の方法」を授権したにすぎない。

 1.について国側は、過去の有名な薬事法の違憲判決の解釈として、省令は緩やか規制なので憲法の職業選択の自由を侵すものではないとした。これに対して原告は、ネット販売事業者にとっては販売行為そのものの自由を規制されているのと同じ事で、ましてや今まで認められてきた行為を突如として規制しているので、相当厳しい規制であり、職業選択の自由を侵し、違法、違憲だとしている。

 2.についても原告側では、前回の期日で裁判所が被告の側に「国会の付帯決議はどうなっていますか」と指摘していたこともあって重要視し、改めて主張した。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加