「薬事法施行規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令」(以下、再改正省令)が5月29日、官報の号外(111号)に掲載され、厚生労働省から公布された。
また、同日付で都道府県知事、保健所設置市長、特別区長宛に通知(PDF)もなされた。この再改正省令は5月29日を施行期日とし、2月6日に公布された「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」(以下、改正省令)は5月29日をもって一部が改正されたうえで、6月1日から施行される。
このほか、5月12日〜5月18日まで募集した再改正省令案に関するパブリックコメントの意見募集結果(PDF)についても公表された。ここには、寄せられた意見と、それに対する厚労省の回答が掲載されている。一方で、意見募集の結果は既に5月22日に開催された「第7回医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」で提出された資料(PDF)にもあり、こちらには、寄せられた意見が数多く掲載されているうえ、経過措置に反対、賛成など種類ごとに区分され、その数の比率も掲載されている。
公布された再改正省令は、パブリックコメント募集時に示された同省令案とほぼ変わらず、インターネット販売を含む通信販売においては第3類医薬品以外の販売を禁止するが、同じ医薬品を継続して利用する人や離島に住む人に対しては、経過措置として6月1日以降も2年間(2011年5月31日まで)は販売を認めるというものだ。
つまり、これまで購入できた第2類医薬品(解熱鎮痛剤や風邪薬、胃腸薬、水虫薬、妊娠検査薬などの大衆薬)は、6月以前から使用している人か離島居住者でなければ、インターネットなど通信販売で購入できなくなる。
今回の再改正省令は、2月6日に公布された「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」(改正省令)に対して反対意見が相次いだことなどから、舛添厚労省大臣が「議論がまだ十分につくされていない」「国民的議論がなされてない」として、みずからが設置した「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」において、議論されてきた。
ただし、7回開催されたこの検討会での議論はまとまらず、報告書や要望書といったものは何ら作られなかった。また、積極的に再改正省令案に賛成する委員もいなかった。そのため、各委員のそれぞれ異なる意見を個別にずらっと連ねて大臣には報告し、それらの意見を反映させるかどうかはあくまでも厚生労働省の責任において公布するという形になった。つまり、再改正省令に検討会のお墨付きは得られなかったのだ。
公布された再改正省令を見ただけでは、検討会でも議論された「継続使用しているかどうかはどのように判断するのか」「離島の定義は何か」といった、詳細なところまではわからない。これらはパブリックコメントの意見募集結果の内容にも書かれているように、通知(PDF)に示された。「薬局、店舗販売業の店舗が存しない離島」とはどこを指すのか、具体的なリストも公表された。
再改正省令が公布されたことに対して、ケンコーコムは同日にコメントを発表。ケンコーコムは「改正省令は憲法に定められた『営業の自由』を何らの合理的根拠なく侵害するとともに、薬事法の授権の範囲を超える違憲・違法な省令である」として、医薬品ネット販売の権利の確認と改正省令の無効確認、取消しを求めて、5月25日にウェルネットとともに「医薬品ネット販売の権利確認請求、違憲・違法省令無効確認・取消請求事件」訴訟を東京地方裁判所に提起している。
コメントでも、「改正省令は本来違憲無効であり、医薬品ネット販売については継続する権利がある」と主張し、「第3類以外の医薬品のインターネット販売を従前通り行うことができるようにするため、上記訴訟などを通じて、憲法に違反する省令の取り消し、情報提供ルールへの再改定を促すとともに、今後もすべての国民が安全に平等に、かつ便利に、医薬品を手に入れられる環境整備のため、活動していく」とした。
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