早いもので、もう年の瀬になってしまいました。起伏の激しい年だったような気がします。華やかな話題と言えば、iPhone 3Gの発売が挙げられます。さらにソフトバンクのCM(白い犬のお父さんシリーズ)も印象に残りました。
しかし業界全体としてはあまり良い年ではなかったのではないでしょうか。今年の世相を現す一言は「変」でした。ケータイビジネスもまさに「変」であったと思います。今回は2008年を振り返ってみます。
まずはモバイルコンテンツ業界。総務省の青少年向けフィルタリングの強化を受けて、コンテンツプロバイダー自らが第三者機関EMAを設立しました。設立までの期間はなんと4カ月。
総務省やキャリアに対してコンテンツプロバイダーが団結して取り組んだことは、「変化」であったと思います。
さらに設立から3カ月でサイト管理体制の認定制度をスタートさせ、実効性も伴いました。フィルタリングをかけられればビジネスが遮断されてしまうという死活問題だったので、スピーディーな対応は当然かも知れませんが、世界に先駆けた取り組みとして大いに評価できる出来事だと思います。
そして、端末メーカーにとっては、決断の年だったと思います。販売ビジネスの「変化」の影響もあったと思いますが、三洋電機の携帯電話事業からの撤退、ノキアの日本市場からの一部撤退、ソニー・エリクソンのドコモ向け供給中止の噂、等々、国内の厳しいケータイビジネスの現状が浮き彫りになりました。
また、キャリアはどうだったでしょう。良くも悪くもソフトバンクの「変容」に話題が集中した年でした。価格競争を仕掛けたのはソフトバンクです。かなり安いプランで他キャリアを揺るがしました。
それだけではなく、1年半もの間、純増連続ナンバー1を達成しています。MVNOにおいても先駆けになりました。iPhone 3G、ディズニー・モバイルもソフトバンクからです。公表されていませんが、ディズニー・モバイルの契約状況は好調とのことです。
その他のキャリアもじっとしているわけではなく来年以降、3.9Gを見据えた驚きを与える取組みがみられるかもしれません。今年のCEATECでドコモが展示した分離ケータイ(モニター部分とテンキー部分が分かれる)やプロジェクターケータイ(映像を投影して大画面でみることができる)はその一例かもしれません。
もうひとつ2台目以降のスマートフォンも話題になりました。イー・モバイルの加入も伸びています。ビジネスマンにはパソコンとシームレスでつながるスマートフォンやウルトラモバイルPCが必需品となったようです。どこまで定着するのかは、来年以降が正念場になると思います。
以上、2008年の話題をみてきましたが、マクロ経済が壊滅状態の中、ケータイビジネスも2009年に向かいます。モバイルコンテンツ産業は2009年2月で生誕10周年になります。その節目の年は、未来に向けた指針を示せるように業界上げて取り組んで欲しいと思います。
「子どもにケータイを持たすな」とか「何々はやめろ」といった規制ばかりではなく、みんながwin-winになることを祈願します。
◇ライタプロフィール
戸口功一(とぐち こういち)
1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より主席研究員。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆、編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。
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